ファーストカット、およそ1分間の長回しの最後に完璧なタイミングで流れる二筋の涙から傑作の予感。数世紀に渡り続いてきたであろう、提灯の点灯/足裏叩きというルーティンが反復される度に重みを増していく。
その遮断された世界へ第四夫人として迎えられたコン・リーは、次第に円環的な日々の破壊者へと変貌していく。朝食を自室に持ち込ませ、他の夫人を傷つけ、提灯を封印され、遂にある者を死に追いやるまでの彼女の行動一つ一つが(意図せずとも)、儀式的に営まれてきた歴史への激しい抵抗の身振りとして収まっている。
全てはクライマックスの幽霊騒動で頂点を迎えるのだが、彼女が嫁いできた初夜と同じ構図のラストカットが証明するように、最終的には彼女の身体=存在そのものが伝統性を破壊する「異物」となっている。
歌声/笛の音が残響する神秘的な音響、切り返しの情感も見事。今年一映画館で観てよかった映画になりそう。