くりふ

エイリアン2のくりふのレビュー・感想・評価

エイリアン2(1986年製作の映画)
3.5
【産む機械vs鬼子母神】

1に続き、アマプラ見放題にて久々に。前のも生存戦争だったのに、“今度は戦争だ!”で売ったのは、キャメロン大好きバトルムービーに変換したってことね。

このジャンル、バトルの面白さで争いの根源が何かを誤魔化せちゃうが、本作では闘って、前作の世界観を塗り替えちゃった。テイストはお金をかけた『ターミネーター』風か。

リプリーがバトルヒロイン化してゆく物語と見れば、まぁ熱い。しかし母の物語としては、かなりお仕着せ。キャメロン大好き母性ヒロイン、爆誕させたかったのでしょうけれど。

母性を描くなら、その人物に子が居るかは重要では?編集で削ったり戻したりするレベルじゃないと思うけど…。この通常版が、リプリーの物語として薄いのはそれが原因か?

バトルムービーとして改めて脱力したのは、味方の最大兵力であり、危険な任務を充分承知していた筈の植民地海兵隊が脆弱で、あんまプロっぽく見えないこと。キャメロンは軍隊経験がなかったと思うが、それにしてももう少し、賢く厳しく描けなかったものか。

彼らがリプリーの強さを引き立てる役割なのもわかるけど、なんか映画版『進撃の巨人』に出てくる、情けない兵団連中を思い出しちゃったよ。

一方、襲い来るエイリアンズがゴキちゃんズに見えてしまい、ゴキブリ駆除の話か?と悩んだり。それでも面白く見せ切るのはキャメロン演出の胆力。そこは素直に脱帽だ。

母vs母のバトルを仕立てたのはわかり易いが、失ったものも大きいかと。エイリアンへのとある追加設定で、母は強し偉しを推す一方、無用なヒエラルキーも生んでしまったね。

結果的に、母性讃歌ではなくなったが、これはキャメロンの狙い通りだったのだろうか?

“ラスボス”は、表向き崇められているようだが、母という厳しい肉体労働で搾取されているようにも見える。本音は最後、開放されてホッとしたんじゃないの?

で、そこから、ああまで追ってくる理由が、実はわからないよね。…復讐心?www

リプリー側も、“ファイヤー!”を母vs母で見れば、ギョギョ!まるで改心前の鬼子母神だ。

…そんなこんなで結局は、母性も生き残るための生存本能か?と思えてくるのでした。なんか改めて、女ってコワイ、と言いそうになっちゃうなあ…。

いま振り返ってみれば、この後『ターミネーター2』で強化される“機械仕掛けの父性”をもっと、ビショップに背負わせていたら、もっとバランスよかったんじゃないだろうか?

<2024.1.9記>
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