クリーム

スプリング・フィーバーのクリームのレビュー・感想・評価

スプリング・フィーバー(2009年製作の映画)
3.8
中国で5年間国内撮影を禁止された監督が、家庭用デジタルカメラを使いゲリラ撮影で制作した作品。そのせいか2009年頃の中国が生々しく映し出されていた。それだけでも興味深かったです。
5人の男女が、スプリング·フィーバー(春の嵐)に巻き込まれる。ジャケの様にずっと湿った暗い激情型群像劇です。



ネタバレ↓




物語は2人の男の濃厚なラヴシーンから始まるのですが、しっかり絡みます。この後も濃厚なキスシーンや性描写が結構あります。中国でもBLは人気らしいのですが、当局から許可証を貰うのが前提。恋愛感情があるBLは基本NG。しかし、本作ではゲイ·バーが存在し、社会が変化している事がわかるのは興味深かった。
ジャン·チョンという男の悲しみが4人の男女を翻弄して嵐の様に去って行くストーリー。
·ジャン
ワンと恋人関係にありながら、束縛を嫌いワンと別れ、現れたルオに身を委ねる。悩める台風の目。
·リン·シュエ
ワンの妻。嫉妬に狂い最後はジャンの首を切り重傷を負わせる。
·ワン
妻がありながらジャンを愛し、去ってゆく彼を思いながら、自殺する。
·ルオ
恋人がいながら「女装の歌姫」ジャンに惹かれてゆく探偵。
·リー·ジン
ルオの恋人。ジャンに惹かれるルオを責める事なく悟り、静かに消える。
ジャンと言う悲しみを抱えた男に踊らされる4人。春の嵐に巻き込まれ春が終わる頃それぞれにまた歩き出す。ジャンは、新しい土地で、新しいパートナーと生きる。傷を包み込むように花のタトゥーを彫り、泥に咲く蓮の花の様に生きて行こうという事なのだろう。
がしかし、希望には思えないエンドだった。彼の心は晴れる事が無い様に見えた。悲しみを持続し、少しずつ蝕んで行く彼の未来。悲しい恋愛群像劇で、ずっと暗いけど、中国のLGBTQが置かれている状況を垣間見れる貴重な作品ではあるが、内容は特に新しいものはない。ただ、中国にしては本当に攻めた作品なので、そこは評価したい。
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