地球外生命体

スプリング・フィーバーの地球外生命体のレビュー・感想・評価

スプリング・フィーバー(2009年製作の映画)
3.3
天安門事件を題材にした『天安門、恋人たち』で2006年に中国当局から5年間の映画製作禁止を言い渡されたロウ・イエ監督が、当局の目をかいくぐって手持ちカメラによるゲリラ撮影で撮りあげた心理サスペンス。現代の南京を舞台に、2人の男と1人の女が繰り広げる錯綜した関係をスリリングに描き出す。

カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したが、タブーとされる同性愛を扱っていることから中国では上映禁止となった。

現代の南京。女性教師リン・シュエは、夫ワン・ピンが浮気をしているのではないかと疑い、その調査を探偵ルオ・ハイタオに依頼する。尾行の結果、夫の浮気相手はジャン・チョンという”青年”であった。尾行されていることに気づいていない夫ワンは、妻にジャンを”同級生”だと紹介する。妻に、ジャンを家族のように見てくれれば便利だと考えたからだ。しかし、ある出来事をきっかけに夫婦関係は破綻し、ジャンの心は、ワンから離れていってしまう。一方、尾行するうちにジャンのことが気になり始めた探偵のルオは、ジャンに近づく。次第に惹かれあうふたり。しかし、ルオにはリー・ジンという恋人がいた。ジャン、ルオ、リー・ジン。それぞれの想いを胸に、奇妙な三人の旅が始まった・・・。

劇中で恋人たちが朗読するのは、高校の教科書にも載っているというほどポピュラーな中国の作家 郁達夫(ユイ・ダーフ)の『春風沈酔の夜』の中の一節。社会という体制の中で移ろう個人の感情を繊細に描いたこの作品は、映画の原作ではないものの、本作に色濃く影響を与えている。

★2009年カンヌ国際映画祭
脚本賞
★2010年台北金馬映画祭
編集賞
作曲賞
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