レインウォッチャー

X-MEN:ファースト・ジェネレーションのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

4.0
サンデイはXデイ④

開幕間もなくして、旧三部作とは良い意味で別物であることがわかる。
'44年のポーランドとアメリカ、少年時代のエリックとチャールズが映し出されるや否や、見事な手際で背景とキャラ紹介を済ませ、テーマをチラ見せしつつハートを掴んでみせる。

いきなりのサスペンス、おっもロ…
うわベーコンやん、優しく見せかけて当然こっワ…
anger & pain と alone & hungryの対比、おっしゃレ…
そんでタイトルの出し方、かっこヨ…

ここまで10分足らず!

もちろん時代が下っているというのもあるけれど、単純に映画の巧さがビリビリ伝わってくるオープニングだ。X-MEN映画・アメコミ映画の枠をこえて、多くの人が一歩引き込まれてしまうのではないだろうか。

その後も、青年となった二人が各地の若きミュータントをリクルートしたり訓練したり…という展開に胸躍らされる。

若さゆえ、彼らは誰もが自らの能力の制御が未熟。
チャールズたちに導かれて彼らは徐々にその術を身につけていくのだけれど、自分の中に潜む獣性ともいえる欲望(まさにビースト?)に向き合って飼い慣らし、社会と折合いをつけていくことは青年期に欠かせない普遍的なプロセス。

その観点でいえば、ヴィランであるセバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)サイドからの誘惑は暴力やドラッグといった快楽主義的ダークサイドへの誘いにも見え、登場人物たちを揺さぶる葛藤は今作をジュブナイル映画としても成り立たせていると思う。

さらにそこを踏み台にして、能力を活かした任務遂行作戦、ケイパーもの的エンタメへと展開させる。

わたしはジェームズ・ボンドにまつわる『007』シリーズをほぼ履修できていない不届き者なのだけれど、それでも伝わるスパイ映画オマージュな画作りや演出などサービス精神満点だ。

加えて勿論、チャールズとエリックの関係性萌ゑ映画としての側面。

きっとまともな青少年期など体験し得なかったであろうエリックの内面にチャールズは初めて触れ、痛みも楽しさも文字通り共有する。そう、これはエリックが青春を埋め合わせる話でもあるのだ。
これが旧三部作の「あの感じ」に繋がっていくのか…!と思えば感銘もひとしおだし、そもそも二人が協力して戦っているだけでも胸熱である。

しかし意外と、今作の描きこみはブロマンスの域に留まっているともいえる。
そこから拗らせたラヴへと開花するには、マグニートーのオリジンまでを描いたこの映画の次でやはり「本物」、ブライアン・シンガー先生の再登壇を待たなければならない。

とはいえわたしにはしっかり見えた、薔薇のつぼみが!マシュー・ヴォーンの美しいナイス・トス。

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今作からミスティークはジェニファー・ローレンスが演じる。
いや全然アリなのだけれど、ローレンスのお嬢ってその、何がとは言わないけれど「ぶりんぶりん」なので、ミスティークのほぼ裸というデザイン的に目のやり場にちょっと困る瞬間もちらほら。

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ED曲『Love Love』を歌うのは、ロビー・ウィリアムズが在籍した英国のヴォーカルグループレジェンド、Take That。
この楽曲が収められたアルバム『Progressed』のジャケットは人類の進化をイメージさせるようなイラストになっていて、まさにX-MENみに溢れている。

さらに歌詞も、
「Why don’t you teach your heart to talk and give your love love」なんてことを歌っちゃってたりして、あらあらまあまあ!これは誰の誰に対する気持ちなんでしょう?困っちゃうわね。