むーしゅ

デンジャラス・ビューティーのむーしゅのレビュー・感想・評価

3.5
 Sandra Bullock主演のコメディ作品。いつものおもしろ邦題シリーズですが、原題は"Miss Congeniality"ということで、最終的にMiss United Statesでは無くMiss Congenialityに選ばれるんだろうな、という予測がつきます。もっとも一番皆から好かれた人が選ばれるMiss Congenialityを、人から好かれたことが無い主人公のグレイシー・ハートが受賞するということ自体が信じられないので逆に面白いことになっています。

 男勝りなFBI捜査官グレイシー・ハートは仕事一筋の独身生活を送っている。そんな中連続爆弾魔から爆破予告がミス・アメリカ・コンテスト宛てに届き、女性捜査官の潜入捜査が計画されるが適任がおらず、仕方なくグレイシーが選ばれる。グレイシーは頑なに拒否をするが、凄腕の美容コンサルタントであるヴィクターのレクチャーを受け、ミス・ニュージャージーとして大会への潜入操作を開始する、という話。とりあえずSandra Bullockがちょいちょい挟むブタ鼻が気になりすぎます。Sandra Bullockは製作にも絡んでいるので、自ら進んでこの役を演じていると思いますが、なかなかの攻めた演技で面白いです。

 物語自体はいたって単純。冒頭にも書きましたが、邦題だけを見れば優勝しちゃうんじゃないかと思いつつも、原題を見ると優勝はしないのね、ということを知ってしまう。とはいえまぁそこはどっちでもよく、大会の流れに乗って男勝りなSandra BullockやオネエなMichael Caine、無駄にかっこいいBenjamin Brattのやりすぎ演技を楽しみながら進んでいきます。公開は2000年ですが、どちらかといえば90年代前半のようなくだらな面白いアメリカンジョーク感満載です。じっくり見る必要が無いので、時間つぶし的な感覚でも楽しめる作品です。

 と見せかけながら実は意外とエッジが効いており、アメリカらしいくだらないコメディの中に本当のテーマである「フェミニズム」が隠れており、そこが中々の曲者です。グレイシーが新しいIDを見て「IQが10点下がったわ」と言っていましたが、当初彼女はミス・アメリカ・コンテストを「バカ女の品評会」として馬鹿にしていました。しかし自分が参加してみたことにより、実は参加者それぞれに思いや考えがあり、チヤホヤされるために頂点を目指していていないことを知り、本来の目的である奨学金を得ることで女性が社会で活躍できるような世界へ向かおうとしていることを知ります。Sandra Bullockも単なるブタ鼻娘として観客を笑わせたかったのではなく、そんな裏の部分を世に伝えるためにこの作品へ出演を決めたのでしょう。実際のミス・アメリカでも今年(2018年)の6月に水着審査を取りやめることを決め#byebyebikiniというタグが話題となりましたが、少なからずそのきっかけにはなった映画なのだと思います。気づかれないように笑いでごまかしていますが、ところどころ交わされる会話に風刺がきいており面白いです。こんな要素があるからこそ、今から見返しても面白いと感じるのだと思いますし、中々の良作です。

 さて劇中曲の"Miss United States"ですが、エンドロールのクレジットを見るとWritten by Clyde Lawrence and Marc Lawrenceの文字が。Marc Lawrenceは本作の脚本を担当しているのでわかるのですが、Clyde Lawrenceは当時7歳の彼の息子です。父が詞を、息子が曲を書いたそうなのですが中々の衝撃、本当なのでしょうか。また本作には続編「デンジャラス・ビューティー2」があり、話題に全くなっていないことからさすがに期待はできなさそうですが、いつか見てみたいです。
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