むーしゅ

スカイスクレイパーのむーしゅのレビュー・感想・評価

スカイスクレイパー(2018年製作の映画)
3.2
 Rawson Marshall Thurber監督が「セントラル・インテリジェンス」以来2度目となるDwayne Johnsonとタッグを組んだ作品。「ダイ・ハード」や「タワーリング・インフェルノ」に似ていることで批判もされていますが、これだけ多くの作品が世に出回っている訳ですから、正直だいたいの映画は何かの映画に似ています。

 FBI時代に事故で左足膝下を失ったウィルはかつての同僚ベンの紹介で香港の超高層ビル「パール」のセキュリティ担当をすることになり、家族で「パール」へ引っ越すことにする。オーナーのツァオからセキュリティシステムをコントロール出来るタブレットを渡されたウィルだが、突然テロリストにタブレットを奪われ、「パール」では火災が発生する。ウィルは取り残された家族を救出するために「パール」へ向かうのだが・・・という話。最近話題の生体認証によるセキュリティを早速悪用されていましたが、画面が省電源に入る度に認証が必要で痛恨のミスとかなったらどうしよう、というどうでも良い心配ばかりしてしまいました笑。

 この映画で新鮮さを感じる点は主人公ウィルが健常者では無いことです。冒頭、FBI捜査官時代に犯人の自爆に巻き込まれ左足を失ったシーンがありましたが、主人公は普段義足をはめて生活しています。アクション映画の主人公がハンディキャップを持っているという設定はいままで見たことが無いような気もしています。しかもその設定を使って涙を誘うようなことはしない、というか特別活かすつもりが無い、という不思議さ。その設定をまともに使ったのは、閉まりかけたドアを義足でこじ開けたくらいでしょうか。監督は「義足であっても、ほかの誰とも同じようにヒーローになれるのに、映画ではそういうものを見たことがなかった」とインタビューで答え、彼らが持つ"潜む力"を表現したかったようですが、Dwayne Johnsonという人類最強クラスの見た目の役者に、あえて能力的マイナス要素を追加することで一般市民目線に近づけようとしたのか、という気もします。そんな主人公を演じるにあたり、義足でエベレスト登頂を成功させたJeff GlasbrennerがDwayne Johnsonの演技指導をしたようですが、まぁ良くも悪くもいつもと変わらない彼でした。

 さて、本作はレジェンダリー・ピクチャーズ製作作品なわけです。レジェンダリー・ピクチャーズは2016年に中国の大連万達グループに買収されて以降、マット・デイモンを使って万里の長城を舞台とした「グレートウォール」や、中国主軸へかなり強引に舵をきった「パシフィック・リム: アップライジング」など中国市場前提で映画製作に乗り出しているため、舞台が香港という時点でもう納得。ついにハリウッドも中国に屈するのかという気がしてしまいます。とはいえ、そこで香港を選ぶのか、という思いは多少ありでした。「MEG ザ・モンスター」に上海を取られてしまったからということもあるのかも知れませんが、世界一の高層ビルが立つのが香港なのかと。ここで深センとかを選んでくれると、わかってるね、という気がしてしまいます。既に力をつけ国からも期待されている上海、そして最近GDP成長率で香港よりも高い数値を示す深センに対し、香港は抜かされていく都市、かつ大陸に飲み込まれる都市というイメージがあります。ここに来てあえて舞台が香港なんだ、という多少の違和感はありました。まぁ実際は英語で映画を作っても通用しそうな都市ということもあったのでしょうけど。

 ちなみにこの高層ビル「パール」のデザインがなかなか素敵ですが、現在世界一の高層ビルであるドバイのブルジュ・ハリファ(828m)を設計したAdrian Smithがこのデザインに関わっているそう。全体的な感想としては時間がそこまで長くないこともあり、バランスが良い作品かなという印象でした。わざわざ進んでは見ないけど、テレビでやっていたら見るかも、くらいなレベル感ですね。ただ粘着テープの偉大さだけはしっかり理解したので、今度買っておきたいと思います。
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