ジグザグ道3部作の1作目。3作品続けて観るために、今作だけ10数年ぶりの再鑑賞でした。
改めてやっぱりすごいなぁと思うことばかり。根気強く子どもの嘘のない眼差しを引き出していく演出が素晴らしい。
凸凹の道を走る子供を捉えるカメラアングル、狭い路地、ブルーの扉、お爺さんの作った窓が映す灯り、風にはためく洗濯物など、隅々まで緻密で優しくて惹きつけられます。
少年アハマッドが、間違って友だちのノートを持ち帰ってしまったために、友だちの家にノートを届ける。たったそれだけの物語なのに、没入して最後に感動が押し寄せる。
子供には人権がないかのように虐げる大人達。
なかなか見つからない友だちの家。
次第にあたりが暗くなる心細さ。
自分のせいで友だちが退学になるという罪悪感。
観ていると胸が締めつけられ、小さなアハマッドを心から応援してしまう。
途中で現れるお爺さんが天使のようで、大人でも優しい人はいるんだよと教えてくれる。お爺さんがくれた白い花が明るい希望のようでした。
お爺さんにバレないようノートをお腹に隠したアハマッドの優しさにも嬉しくなります。
ひ弱そうな少年が最後は頼もしく見えて、もう涙、涙。
シンプルだからこそ見えてくるイランの社会情勢や教育のあり方。映画の力を見せつけられた作品でもありました。