むさじー

竜馬暗殺のむさじーのレビュー・感想・評価

竜馬暗殺(1974年製作の映画)
4.0
<謎に包まれた暗殺事件をめぐる青春群像劇>

脚本は清水邦夫と田辺泰志で、粒子の粗い16ミリ撮影、モノクロ映像で仕上がっている。
映画は、竜馬や慎太郎が暗殺された「近江屋事件」の真相に迫るというより、男三人、女二人の愛憎劇であり、青春群像劇である。
男にとっては理想と現実の狭間でゆれ、苦悩し葛藤する姿であり、女たちは騒乱の世に身を投じて死にゆく男たちを横目に、したたかに生き延びていく。
幕末という狂気の時代、その極限状況の中で、竜馬と慎太郎だけがまともな人物のように映る。
竜馬は女遊びに走り、倒幕という革命思想にも疑問を持ち、慎太郎も竜馬暗殺の使命を持ちながら果たせず、むしろ陸援隊の同士をせせら笑っている。結局、時代の狂気に染まらず正気を保とうとしたが故に、周囲との軋轢が生じて殺されたのではないかという気もする。
74年はまだ革命が謳われていた政治の季節、その状況下で理想を求める若者らにも同じような孤独や葛藤があることを投影させようと、あえてモノトーンのざらついた画調にしたのだろうか。
歴史ドラマというより、ドキュメンタリーに近い迫力を生んでいる。
むさじー

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