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あゝひめゆりの塔のmhのネタバレレビュー・内容・結末

あゝひめゆりの塔(1968年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「これが別れの水盃ね」
「違うわ、これが門出の酒盛りよ」

ひめゆり学徒隊がどのような運命をたどったか?
多少なりにも知っていれば大まかなストーリーは想像がつくんだけど、この映画はそれを、予想をはるかに上回る火薬の量と、ミュージカル並みに挿入される歌で表現してみせる。
そうやって描かれた沖縄戦があまりに鮮やかで強烈。
市川崑の「ビルマの竪琴」しかり、キューブリックの「突撃」しかり、岡本喜八の「血と砂」しかり、戦争の反対語は「歌」なんじゃないかと思うほど、戦争映画と歌はよく合う。
艦砲射撃が降り注ぐなか行われる卒業式で、誰ひとり顔色ひとつ変えない(短い期間に麻痺するほど攻撃が苛烈だったことを示している)のがすごい演出だった。
史実では、周囲をアメリカ軍に囲まれてから動員解除したのがはたして正しいことだったのかみたいな議論もある。亡くなったひめゆり学徒のほとんどが解散後に死んでいるからだ。映画ではその責任をだれが請け負うのかうまくぼやかしていた。(強いていえば校長先生のせいにはなっているけど、残っても死ぬのを待つだけ。自決するよりかは万が一にかけ突破を試みるというロジック)特定の誰か(orなにか)のせいにしないことが結果、効果的に働いていたと思う。
冒頭にも度肝抜かれた。こちらの想像を大きく外してくるうまい導入。普通に考えたら渡哲也いらないけど、最後まで見るとそれが効いてくる。冒頭の閉塞感があるからこそ、あのラストカットの(ともすれば開放感ともとれる)すごさが際立つ。
この映画はシナリオがほんとうまい。
ほか、壮絶だった沖縄戦を語る上では欠かせない、対馬丸事件、鉄血勤皇隊にも触れている。
日本の戦争ものをけっこう見たけど、一位二位を争う一本だと思う。
mh

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