【第56回カンヌ映画祭 パルムドール】
『ミルク』『マイ・プライベート・アイダホ』などのガス・ヴァン・サント監督がパルムドールと監督賞の二冠を達成した作品。
明言されてはいないものの明らかにコロンバイン高校銃乱射事件を題材にしている作品で、なるほどこれはこの時代を切り取った作品として重要だし、ガス・ヴァン・サントの演出が素晴らしい。
一人ひとりのなんてことない日常を描くことに徹底している。静かでいかにもインディーっぽい。しかしその演出で犯人側も描くことで余計にアメリカ社会における闇や狂気が浮き彫りになっている。
あんな簡単に銃が買えてしまうんだっていう衝撃もあるし、犯人側も動機などは一切描かれない。あくまで日常の一部として銃があるのが恐ろしい。
また、犯人の男子二人がシャワールームでキスするシーンが印象に残った。自らがゲイであるガス・ヴァン・サントが何も考えずにあのシーンを入れるわけがない。実際犯人たちは「オカマ」「ホモ」と虐められていたようである。
高校生という子供と大人の間の不安定な時期、彼らは孤独だったのではないか。セクシャリティは別にしてお互いの孤独を埋めようとしたシーンに思えて泣けてしまった。
撃たれる側の生徒もイジメっ子、イケてる子ばかりではない。写真部の男の子や「ダサい」となじられている冴えない女の子も問答無用に撃たれる。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』でも言われていたように、高校生は現在の状態が自分の全てのように感じてしまう。でも大学に入ったらそんなことないって分かるのに。
静かに日常を描きながらも何かに取り囲まれているような息苦しさを感じる。パルムドールとるほどかな?とは思うけどある時代の肖像として貴重な一本。