ぐっない

エレファントのぐっないのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
4.9

いつか観返さなければいけないと思いながら、でも自分の感想さえまともに読み返せず、気がついたらあと数ヶ月で高校を卒業することになっていた。


彼らの日々はやっぱり私の日々でもあった。特定の誰かじゃない。ひとつひとつの描写がとても巧かった。静かに、淡々と、追う背中を変えて。それが怖かった。中学生の私はなにを思っていたんだろうと思い出そうとしながら観ていたけれど、忘れたのかどこかに仕舞ったのか、全然思い出せなかった。なんだか、数年前に好きだった曲を聴いても、その歌詞のどの部分に共感していたのかも分からなくなってしまったみたいに、寂しくなった。


けれど彼らが学校に乗り込んでからはとても怖くて、両手で目を覆って指の間から見つめていた。やっぱり「馬鹿野郎」って思った。


私「スクールカースト」という言葉が苦手です。明確にそこにあること、私はきっと誰よりも気がついていること、を知りながら、でもやっぱりあんまり言葉にしたくない。言葉にしなければ輪郭はすこしぼんやりとするから。
「海を分母に、空を分子にしたら、1を超えるのだろうか」と朝井リョウが書いていたことを思い出した。私を分母に、あの子を分子にしたら、1を超えるのだろうか。そういうのって、きっとみんな、本当は感じていたりするんだろう。


今考えるべきではないのであろうことばかり考えている。足踏みしているだけだと分かりながら、でも必要なことなのだと自分に言い聞かせている。生きるのはやっぱり難しい。苦しいことはかたちを変えてずっとあるのかな。

けれど、だからこそ、ただ静かに、でも見ないフリせずに描いてくれる映画があることは、とても大切なのだと思う。
私が「学校」という言葉を聞いて思い出すのは、やっぱりこの映画だ。と思う自分が悲しい。


「この映画の空の色が綺麗だった。誰かの背中から誰かの背中に移っていく。みんな生きてる。だからその生を誰かの生が殺してしまったらいけないんだなあ」と書いたあの頃の私へ、拍手、よく生きました、です。
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