ぐっない

テルマ&ルイーズ 4Kのぐっないのネタバレレビュー・内容・結末

テルマ&ルイーズ 4K(1991年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画みて、「2人にも他の道があったと思う」って言える人間になりたかった。すごく汚い気持ちと、本当に羨ましい気持ちでごちゃごちゃになる。
男の人から、「所詮女は」と思われていると感じるたび、性欲を解消する対象としてしか見られていないと感じるたび、自分の中の生きてるところが、ひとつずつ、死んでいく気がする。
女の子は、幼い頃から危ない人に気をつけなさいと教わる。襲われるってことの意味もわからない頃から、夜道に気をつけなさいと言われる。私が初めて露出狂に出会ったのは小学生の頃で、電車の中だった。帰ったあと、家のカーテンを全て閉めて、一人で泣いた。ついてきてたらどうしようと思って震えながらお風呂の浴槽に入って蓋閉めて隠れた。親には言えなかった。自分の娘がこんな目に遭ったと知ったら、どれだけ悲しいだろうと思ったから。成長するたびに痴漢されたり盗撮されたりパパ活どう?とかキャバで働かない?とか声かけられて、街中歩いてるだけで知らない男に声かけられて、断ったら死ねって言われる。毎日性加害のニュースが流れて、SNSではスクロールするたびありえないことが普通に書いてあって、息が止まりそうになる。
私はレイプ描写がある映画が好きじゃない。それが、男の人のために描写されてる場合、本当に死にたくなる。映画でだって、そんな酷いことしないでくれと思う。
だから、この映画で、テルマがレイプされそうになったとき、ルイーズが来て本当によかったと思った。そうしたら撃ってしまって、私はテルマたちが心配でたまらなかった。
ルイーズが言ったように、もしもその場で警察呼んでたとして、テルマが誘ったからとか、抵抗しなかったからとか、濡れてたからとか言われるんでしょう。それでもし捕まったとしてすぐ出てくるんでしょう。テルマたちは、報復にずっと怯えなきゃいけないんでしょう。
でも私も、テルマに対して、「チャラいやつって分かってたのに一緒にお酒飲んで踊ったじゃん、馬鹿だなあ」って思って、そういう自分がいやになった。だとして、あんな風に襲われていいはずがない。楽しんで何が悪いんだよ。ルイーズがそれを責めないのを見て、最初はテルマ謝りなよ、とも思って、でもどんどんそうだよね、って思った。
旦那さんはテルマを所有物のように扱う。いい人だと思った男にはお金を盗まれて、ドライブしてるだけでトラックの男に卑猥な言葉を浴びせられる。そういうこと、彼女たちは今までどれだけあったんだろうと思う。今後、どれだけあるんだろうと思う。
強くなって男の人を蹴散らしていく彼女たちに、かっこいいー!と思いながら、悲しかった。こうなるしかないんだなあと思った。いつも、映画を観て、でも他の人に迷惑かけちゃダメだよと思うくせに、彼女たちには全く思わなかった。自分の倫理観のバランスの問題だと思う。
私は、あのラスト、幸せなラストだとは思わない。でも悲劇だとも思わない。だって、生きていて、ああいう目に遭わないこと、ないもん。あの先彼女たちはあと何度男の人に踏みつけられるんだろうと思ったら、死ぬしかないのかなって思った。この世界の仕組み上、現代だって女であるというだけで痛めつけられていて、じゃあ女の子同士、手を繋いで、崖から落ちるしかないのかもしれない。他の道ってどんな道?教えてほしい。
ルイーズがテキサスであったこと、最後まで分からなかったなあ。分からなくてよかったと思う。記録されなくて、よかったと思う。
ふとした瞬間の、彼女たちの遠くを見つめる目が、忘れられない。「私たち、強いんじゃなくて、強くあろうとしてるだけだよね」って以前読んで、涙が出た。
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