このレビューはネタバレを含みます
鑑賞中はすてきだなあと思っていたし、何度か泣きそうになったけれど、鑑賞後ずっとよく分からない違和感があって、なんだろうと考えていたけれどすこしだけわかった気がする。
彼の生き方は物に溢れ欲に塗れた現代の人々にとって、むしろ憧れを抱くようなものだし、疲れ果てた人々がこうありたいと思うくらい、美しく描かれていたと思う。彼のような人は実際にいるのだろうし、市井のひとを主役に映画を撮ってくれるのは素晴らしいと思った。けれど同時に、これを美しいと捉えて泣いてしまっていいのかとも思う。
彼が清掃を行うトイレはすべてモダンで美しく、東京を代表するようなもので、汚く、古いものは出てこない。画に耐えないから。この映画の美しさを損なうから。
彼が日々、排泄を行ったり、家で自炊をしたり、洗い物をする場面も出てこない。
こんなに毎日のルーティンを描き、ドキュメンタリーのように映すけれど、美しくない部分は出てこない。
それってなんだか、こういうテーマを扱う上で、汚いんじゃないかと思った。
世界はひどいニュースや汚いことばかりだし、貧しさはないほうがいい。
私は他人への羨望や嫉妬、自意識や物欲に塗れた人間だけど、このまま生きていきますわ、とおもった。
あと、女性の描かれ方があんまり好きじゃなかった。