半兵衛

果しなき欲望の半兵衛のレビュー・感想・評価

果しなき欲望(1958年製作の映画)
4.0
日活が得意とする犯罪ドラマを、シリアスな犯罪者パートと彼らが地下にあるモルヒネを奪取するため穴堀をしているのに気づかない商店街の人々の能天気なパートを絶妙な塩梅でミックスすることで喜劇にしてしまう今村昌平監督の才気が光る作品。犯罪者の配役に西村晃や加藤武、小沢昭一という今村演出を心得ている役者を置いていることも自然に笑いを誘発させることに成功している。

後半のモルヒネを手に入れるため遮二無二穴を掘り続ける地下の主人公たちと立ち退きを迫られドタバタする商店街の人や業者との対比が効いた展開も見事で、なにも知らない庶民たちの呑気なパワーに包まれて悪党が次々と悲惨に死んでいくのに何故か笑いが込み上げてくることに。悪党に家を貸す家主・菅井一郎のドケチっぷりやその間抜けな息子で就職を餌になにも知らないまま悪党を手助けする・長門裕之のコメディリリーフも◎。

今村好みの肉感的な魅力を出しつつ、泥だらけになったり水でずぶぬれになる体当たり演技を披露する悪女渡辺美佐子が素晴らしい。

そして単なるおっさんキャラだと思っていたら悪人を翻弄しラストを見事に締める高品格の熱演は日活ファンにとっては嬉しいサプライズ。
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