このレビューはネタバレを含みます
夢の中の美女を追ううち、夢と現実の二重生活を送ることになった男を描く、カットアウトアニメーション・コメディ。
シュヴァンクマイエル監督自身が見た夢をモチーフに、夢と無意識の世界を深く掘り下げて描写。冒頭、同監督が画面に登場し、本作の製作裏話を自ら解説。今回は予算不足のため、俳優たちによる実演の代わりに、簡単で便利な切り絵アニメの手法を多く用いた、と語っているものの、実写とアニメが混在したその独特の映像スタイルは、シュヴァンクマイエルのお馴染みの手法。
物語は、夢の中で出会った女性に会いたいと思う冴えない中年男性の苦労を描き、夢が現実に影響を与えるという、シュヴァンクマイエル監督らしいグロテスクな演出(作中には蛇やワニ、カエル、ニワトリなどの動物が頻繁に登場し)、食べる時の音、頻繁に登場する性行為の描写も音の使い方がグロテスクである。精神分析医との対話では、フロイトの精神分析やユングの夢の解釈に皮肉を効かせており、「アニマを妊娠させるなんて…」といったセリフが笑いを誘う。
どちらが夢で現実か分からなくなるものの、4本のローソクが立っているケーキやワニ革のバッグ、手首の傷など、本作を読み解く鍵が所々表れる。単なる夢の解釈で終わることなく、そこから物語が膨らんでいき、主人公が自らのトラウマと向き合うことになる展開が丁寧に描かれている。
2024/04/15 DVD