くりふ

エスパイのくりふのレビュー・感想・評価

エスパイ(1974年製作の映画)
3.0
【愛のテレポ】

かすかに記憶あるがコレ、百恵ちゃんの『伊豆の踊り子』と二本立て公開したと思う。私の父親がコッソリ、S級かおるパイ目当てで見に行った気がする。

初見はA Long time ago…確かDVDにて。

笑って見ていたら、S級かおるパイで催淫いや催眠にかけられ…でもやっぱ最後、元ライダー1号によるエスパー最高峰のアノ妙技「椅子取りゲームか!」で我に返る。え、コレ寒いのに笑撃の傑作?とカオスな錯覚に包まれた記憶が…。ああ、アレが催眠だったのか!?

最近また、アマプラ先生に勧められたので、S級かおるパイ目当てで久しぶりに再見。

素晴らしいSパイでした。が、その持ち主・役名マリア嬢は、セクハラされ泣き寝入りする展開なので、Sパイ見れても嬉しくないフリするのが、MeToo以降の正しい態度な気がする。

全体やっぱり、大人向け戦隊シリーズみたいなクオリティ。笑えぬコメディ仕立てでした。

本作公開の1974年って、猫も杓子も、杓子でなくスプーン曲げに取り憑かれ盲信し、その教祖たるユリ・ゲラーが来日したのでしたね。そこに便乗し、急ごしらえしたのが如実にわかる仕上がりです。

が、そういう世相を重圧に、制作陣が適切に映画化できず迷子になる様子も伝わってきて、切なくもなります。ここぞという時に轟く、尾崎紀世彦の“歌謡曲”が嵌って、嗚呼哀しい。

エスパイ組織は、世界を救うため国連が設立したそうですが、エスパーの卵を見つけたら即、孵化もさせず現場投入するらしく、厳しい自転車操業をしています。これが、本作の制作現場そのまんま、という気がしてしまうのです。

メンバーがまず、メンタル弱すぎ。すぐ挫けるので、すぐ物語も一時停止。ソレ乱発。で、超能力もロクに発揮できないから、最後まで超能力合戦が起こらない。終盤、ラスボス頑張ってますが、傍にあるイス飛ばす程度。いやソレ、ポルターガイスト現象でしょって。

結局、超能力出すのめんどいからか、撃ち合うか殴り合うかで殆ど、時が潰れてゆきます。

でも…今回、催眠にかけられたのは、例の「超能力の源は、愛」という仰天テーマ。

いやさ、コレ、実は正論じゃんと思って。まあ、現実にエスパーが世を動かすコトなんて永久に起きないけれど、そうなったらまず、絶対必要なコトでしょう。世がこう殺伐として来ると、アノ藤岡弘サンの野太いセリフに、意外と説得力を感じてしまうのでした。

だって、けっきょくお家騒動だったスター・ウォーズの、あの胡散臭いフォースにコレがあれば、無意味な宇宙大戦を、9作も続ける必要、なかったじゃないか!

…なあんて、70年代のラブ&ピース催眠にかけられた気分に、一瞬だけしてもらえました。

何にせよ、素っ頓狂な展開だから、ナニが飛び出すか先が読めず、再見だったハズなのに、最後まで苦笑含みのワクワクで、楽しめてしまったのでありました。

<2022.7.27記>
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