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フォート・サガンのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

フォート・サガン(1984年製作の映画)
3.7
『Dune2』に触発され、砂漠の美しさを描いた作品を観たくなり鑑賞。アラン・コルノー監督は作り込みが徹底しているので、本作の砂漠も『Dune』に劣らず、本当に美しかった。このシーンが撮りたかったんだろうなと誰もが思うキャラバンの隊列と砂紋。東山魁夷の絵のようだった。

物語は、植民地化のため、未踏のサハラ砂漠の多様な部族を治めたフランスの英雄サガン(ドパルデュー)の話。

地味だけど、フランスでヒットしたのは、出自が農民のため、軍隊ではいじめられ、上流階級の思い人(ソフィ・マルソー)のために、いくつもの難関を乗り越え、苦難の末に立身出世し、思い人とも結ばれるところにフランス人のカタルシスがあったのかなと。(その後も苦難が続く)

植民地化は今はもちろん(制作当時も)NGだけど、フランスのアルジェリアに対する思いは外国人の私にはわからない、特別な何かがあるように感じる。それを表した作品に思えた。

その何かは、まず、砂漠を非常に美しく描いていることからも、未開の土地や民族を卑下しているのではなく、憧れに近い、畏怖の思いのようなものを感じる。

たとえば、サガンはいじわるな上司の無茶な命令を出世のために口答えなどせず、言いなりに受けるんだけど、どうしても命令に従わなかった時があり、それは捕虜となった女性や子供を解放するだけでなく、村まで守って連れて帰していた。また、フランス側についた部族は使い捨てだけど、無理させず、ケガすればサガンが手当てし(ときには外科手術も)、亡くなればきちんと部族の宗教で埋葬する。

砂漠の民の生き方や価値観に合わせ、信頼を得て、賛同者を増やしていく。たしか宗教もムスリムに変えたはず。この辺りは『Dune』にも通じるものがある。

そして、フランスは人を判断する際の価値観は、生まれた時の<階級>だが、砂漠の民はその人がどんな<行為>をする人物かで判断するとサガンは感嘆する。これも『Dune』のフレメンの描写に似ている。

サガンは砂漠とその民の本当の自由と自立に惹かれていく。


厳しくもサハラ砂漠の美しさを讃えたのはフランスの国民的作家サン=テグジュペリも同じ。

たしかにフランスはサハラ砂漠の一部を植民地化したのだけど、憧憬も大きかったように思える。

『アラビアのロレンス』は必見ですね。イギリスの思惑はフランスのそれとはずいぶん違いそう。
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