・ジャンル
スラッシャー/ホラー
・あらすじ
‘73年6月18日、テキサス州
メキシコへの旅行から戻りダラスで行われるコンサートへの道中にあったエリンと恋人ケンパー、そしてその友人達
彼らが車を走らせていると突如、目の前に異様な様子の女性が現れる
茫然自失その物の彼女に一行が話を聞くと何者かに襲われ逃げてきた様だった
エリンは周囲の反対を押し切り女性を乗せるのだが彼女は「あなた達は死ぬ」と言い残しその場で陰部から銃を抜き取り自殺
パニックに陥った一行はガソリンスタンドの女主人に通報してもらうのだが返ってきた答えはどこかおかしい
主人によれば保安官は彼らから自分の元へ出向くよう要求したと言う
困惑しながらも指定された場所へ向かうがそこに保安官の姿はない
やむなくエリンはケンパーと共に居合わせた少年ジェダイアの案内で保安官の家へ
しかしやはりそこにもおらず住んでいたのは別人だった
そしてその家で彼らを襲う惨劇が始まる
それが後世に語り継がれる程の事件となる事を彼らは知る由もなかった…
・感想
人皮マスクとチェーンソーでお馴染みの殺人鬼レザーフェイスとその一家の凶行を描くシリーズ5作目
1作目のリメイク版にあたる内容だがレザーフェイスの本名や登場人物は大幅に変わっており世界観もシリアス路線となっている
シリーズ初の正式なリメイク版の本作
Wikiによれば批評家の反応は芳しくなかったらしいけど実際観てみるとかなり堅実な作りのシリアスなホラーになっていて個人的には好印象
前作がめちゃくちゃ酷かったからハードルが下がっているというのはあるかもしれないけど…w
一家の面々が纏う不穏な空気、じわじわと追い詰められていく展開、不快さを追求したゴア描写、レザーフェイスに加えられた人皮マスクの背景や一家の動機…
手堅く且つ厭な方に厭な方に事が運ばれていく展開も無難に楽しい
だからこそ原作にあったカルト性やシュールさが失われていたのが寂しくはあるものの「死霊のはらわた」や「ハロウィン」のリメイク版が好きな人ならこちらも受け入れられると思う
それでも“じい様”の不在やレザーフェイスの鈍臭さと可愛さが無くなったのは惜しいけども
勿体なかった点としてはレザーフェイスとその家族の設定に加えられた修正
原作の殺人一家ソーヤー家はエド・ゲインとソニー・ビーン一族をモデルにしていてキャラクターはトンチキその物
話が通じず狂喜乱舞しながら殺戮を繰り返し追い詰める姿には特有の狂気は感じられた
一方、今作での一家はヒューイット家となっておりレザーフェイスの本名はババからトーマスへと変更
食人も匂わせる程度でレザーフェイス以外は静かな狂気を滲ませる知能犯
レザーフェイスの人皮マスクも単なる狂気表現ではなく生来の皮膚病を隠す為で殺戮の動機は彼を迫害した社会への報復
論理としてはこちらの方が頷けはするもののその分、異常性が薄まってしまっている
またソーヤー家の面々には知的障害や精神障害が見受けられ恐らくこれはソニー・ビーン一族の近親相姦にヒントを得ている
対してヒューイット家は近親相姦ではなく人攫いで家系を維持していた
それがダメという訳ではないけど行動が論理的な分、それに至った理由が明かされなかった事に若干モヤモヤが残る
まぁこれは前日譚を描く続編「テキサス・チェーンソー・ビギニング」で解消されるのかもしれないけど…
逆に優れていたのが前述の不快さを追求したゴア描写とそれに伴う恐怖演出
片脚を切断されフックに突き刺して吊るし足元にはオルガン
抜け出す為、引き抜こうとして失敗する度にフックは深く刺さり脚の切断面には塩が塗られる…
冒頭の女性の自殺も拳銃自殺なので呆気なくなりそうな所をとにかく厭な描き方をしていた
陰部に刺された銃を引き抜き自殺、遺体の口からは硝煙が漏れ車のシートには脳が飛び散る…
エリンの前にケンパーの皮で作ったマスク姿で現れるレザーフェイスとかもう最高
クライマックスでのエリンの逃走中も絶妙に最悪な場所にばかり追い込まれていくし、保安官でヒューイット家の息子であるホイトも高圧的に一行を地面に伏せさせモーガンに自殺の再現を脳と血の残った現場の車で行わせるという徹底ぶり
ゴア好きにはたまらない描写がふんだんに散りばめられていて飽きさせない
ラストの記録映像もファウンドフッテージ/POV的な不気味さがあってイイ…
総合的には堅実さが長所でもあり短所でもあるという感じだけどこのゴア描写/不快描写がしっかりしているので原作と別物として観ればスラッシャー/ホラーとしては普通に良作の部類なんじゃないかな?と
あと地味にエリン達が向かっていたコンサートがLynyrd Skynyrdだったのが南部という舞台をしっかり反映してて良かった