都部

ザ・ロイヤル・テネンバウムズの都部のレビュー・感想・評価

4.0
ウェス・アンダーソン作品を好ましく思っているのですが、中でも自分の好みの上澄みにあるのが本作。離散した歪な家族がそれぞれ散文的な物語を果たしながら、支離滅裂とすら思える道程を経て、物語の結末に集約される この収まりの良さは監督の自覚的な虚構性の顕示性とひどく噛み合っていると思えるからだ。

箱庭を思わせる舞台世界に宙吊りにされた人形劇を目にするような感覚に囚われる人間関係の応酬はオフビートなユーモアにより脚色されており、慄然すら誘う几帳面な画面構成がその構図をより際立たせている。それなのに閉塞感とは無縁の味わいであるのは、各々個性が確立された登場人物達の挙動の面白可笑しさが担保されているからで、"家族"という他人への奇妙さを覚える際の最も近しい間柄の距離感の表現にこれがピタリと嵌っているように思える。みな突飛な性格をしているが、しかし非現実的とは切り離せない俗っぽさを彼らは等しく持ち合わせていて、それが"家族"の普遍的な魅力であるとも言えるのだ。とても愉快。

洒脱な世界観と関係性の描写は流石だが、散漫な印象がまるでないかと言われるとそうでもなく、家族を描く上で必要不可欠な尺ではあるが余計と感じるパートも多々あった。自由に好き勝手に生きてきた息子達が雁首揃えて最後は肩を並べる羽目になる──だってそれが家族だから、と個性的な個人が否応なしに同一の枠に纏められる一種の乱暴な振る舞いはまあ父親のそれだよね的な──ことに対するカタルシスや喜劇性はしかし爽やかな後味を演出しており、何度も見たいなと思わせる中毒性を帯びるに至っている節は必ずしもあるだろう。
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