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スパルタ教育 くたばれ親父のakrutmのレビュー・感想・評価

3.5
プロ野球の審判員を主人公に、その妻や5人の子供たちの家庭における出来事を描いた、舛田利雄監督のドラマ映画。石原プロで製作した映画が興行的に上手くいっていないこともあり、気晴らしも兼ねて日活と石原プロが共同で製作した作品。

とにかく裕次郎がホームドラマで主演しているというだけでも出色の一本である。夫婦役で大映の若尾文子と共演するという点も見どころかもしれない。原作は石原慎太郎の『スパルタ教育』というエッセイ集となっているが、本映画の内容とはほとんど関係ない。そもそも、裕次郎が子供たちをスパルタ教育するという内容では全くない。どちらかというと、プロ野球の二軍選手役の渡哲也が子供たちにやんちゃを教えるみたいなプロットである。また、団地、核家族化、学生運動、暴走族など、高度経済成長期を象徴するかのような当時の世相を色濃く反映した内容も、日活作品としては異色であろう。

このような特色があるにも関わらず、無理やり感が強いストーリー展開など、映画の出来としては良くない。審判員という設定そのものも十分に活かされていない。そもそもどんな観客をターゲットにしているのかが全くわからないのである。ホームドラマだけでは裕次郎ファンが映画館に足を運ばないと考えたのだろうが、最後のほうになって、ホームドラマにはそぐわない暴走族との戦いみたいな陳腐なアクションシーンが挿入されるあたりは悲しくなってくる。

結局、このような映画を裕次郎主演で配給せざるを得ないほど、当時の映画産業が大きく斜陽化していたということだろう。実際、本映画を配給したのは、独自での配給が財政的に難しくなった大映と日活が共同に設立したダイニチ映配である。日活の裕次郎映画としては翌年の『男の世界』が最後になり、日活はロマンポルノ路線に舵を切ることになる。

・駐車してある車に登ってしょんべんをかけるとか、団地での子供たちの暴れっぷりが凄い。
・若尾文子は団地妻としての脇役に徹しているが、和装、洋装のどちらも似合う。
・審判員の先輩の娘で学生運動に身を投じている高校生を演じている有川由紀は、活動期間は短いが、NHK職員時に中村登監督にスカウトされ『紀の川』でデビューした若手女優。可愛いけれど、高校生を演じるにはちょっと無理があるか。
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