peplum

ゾンビ/ディレクターズカット完全版のpeplumのレビュー・感想・評価

4.5
こんなに面白いと思ってなくてびっくりした。
『七人の侍』『ブレードランナー』『スターウォーズ』など後の映画に多大な影響を与えた映画というのはどのジャンルにもあるが、この作品こそは始祖にして比類なき完成度だと痛感した。後発作品がオマージュにしろリスペクトにしろ雑なモノマネにしろ数限りなく模倣してきたであろう展開の数々(ショッピングモール籠城、仲間のひとりをやむなく殺す、ヘリなど)がまさに原石のような大きさと密度でぎっしり詰まっていて感心した。
歩くゾンビの怖さはノロノロなのにいきなり出てくる、たくさん出てくる怖さで、最近の走るゾンビに慣れてると怖がれないかなーと思ってたけどちゃんとヒヤヒヤした。走るゾンビは怖いというかモンスターだからゾンビではないと思う。
冒頭のテレビ局のシーンから既に世界は混乱の中にあるというのが意外で、昔の映画だからもっとゆっくり始まると思ってたのにのっけからやばい感じでワクワク。ショッピングモールについてからの掃討作戦の面白さもあったが、なんでもショッピングのコーナーにみる物質文明・消費社会の滑稽さみたいなのが滲んでいて(チャップリンのモダンタイムスにも似た遊びがあるなーと思った)、夢のある蕩尽だった。ポストアポカリプスによってめちゃくちゃ自由になって抑圧されていたことがなんでも出来ちゃうというのが面白い(永遠に続くかのような平和な日常は『うる星やつら2ビューティフルドリーマー』もよく似てる)。全体に漂う大晦日感とでも言うべき非日常の高揚があって好きだ。わりとのほほんとした音楽でゾンビが再度ショッピングモールをうろつく姿はおかしみに満ち満ちていた。
ゾンビの造形は顔色のめちゃくちゃわるい人間という感じで傷痕とか爛れとかあまりなく、そこもシュールでよかった。ゾンビ映画見るといつも思うがゾンビ役は撮影楽しそうだなー。モツもしっかり出るのもさすがである。
peplum

peplum