緑青

ワルキューレの緑青のレビュー・感想・評価

ワルキューレ(2008年製作の映画)
3.7
この監督の映像が見たくて視聴。良くも悪くも最高にこだわりの出た映像だった、映像自体は画面も音楽もキャストも本当に好き。
トム・クルーズのあの顔であの髪型で軍服で眼帯、ほぼ漫画のような完成されたビジュアルだった。よって戦争映画らしいリアリティとかとは無縁というか、若干エンタメ寄りの印象(登場人物が史実上の人間というよりキャラクターに思える)があった。史実として暗殺が失敗しているのでそれに従った筋書きとなり、映画としてスレスレセーフ(「暗殺成功!!!やったぜ!!!!ヒーローだ!!!!」みたいなノリにはなれない)なのかなと思う。映画である以上ある程度の「見やすさ」は担保されるべきだと思うが、「戦争映画」である以上、戦争を消費したり、戦争というテーマをただの口実として別の目的や欲望を満たすようなことがあってはならないと個人的には思うから。

「このままじゃ『ナチスのドイツ』だと思われる。ドイツ人全員がナチスだと思われないためにやらなくちゃいけない」という旨のセリフが刺さって抜けなかった。確かに私はそんなふうに内部でここまで大々的な抵抗がなされていたことを知らなかったし、ぼんやり押し流されていった大衆しか想像していなかった、なんだか今の日本に重ね合わされるようで唸った。少し調べたらこの手のナチスを標的にした暗殺(未遂も含めて)がドイツ国内外で40件以上画策されたそうで、そんな強烈なレジスタンスをも弾圧して政権を維持するだけの暴力がいかに圧倒的だったかを想像して身ぶるいせざる得なかった。

また、これはどうでもいいけど、冒頭でシュタウフェンベルクのドイツ語がオーバーラップして英語になったところ、おそらく古典的なんだろうけど個人的にとても好きでした。こういう「この人たちはドイツ語で話していますが、英語に吹き替えしています」的なエクスキューズをしてもらえると「いや、この人たち別に英語圏の人間じゃないし、英語では話さないでしょ…そういう表現ってだけだろうけども…」みたいなモヤモヤがなくストンと入ります。
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