一人旅

ベルエポックの一人旅のレビュー・感想・評価

ベルエポック(1992年製作の映画)
5.0
第66回アカデミー賞外国語映画賞。
フェルナンド・トルエバ監督作。

共和制成立前後、1930年代初頭のスペインを舞台にした恋愛ドラマで、小さな村に辿り着いた脱走兵の青年:フェルナンドが、居候させてもらっているお家の4姉妹それぞれと関係を持っていく様子を、スペインの長閑な村風景の中に綴っています。

都市部で政権に対するデモや反乱が頻発していること等どこ吹く風、本作品は地方の長閑な小村における青年と四姉妹の恋模様を大らかに描いた恋愛ドラマとなっています。恋愛活動に夢中になる青年&四姉妹が織りなす嫉妬や欲望が渦巻く悲喜こもごもの恋の行方を、激変の只中にある緊迫の国内情勢とは対比的に描くことで、“自由”という人生の在り方を提示したヒューマニズム溢れる作品であります。こうした“戦争は他人事で、自由を謳歌する人々”を描いた作劇は、本作より2年前に同賞を受賞した『エーゲ海の天使』(91)に連なる、人間と戦争に対する逆転的発想のアプローチとなっています。

青年と四姉妹の恋模様はそれぞれ違った味わいとなっていますし(愛し合う時のシチュエーションが多種多様で楽しい)、“フェルナンドは四姉妹の誰と結ばれるのか”―という最大の関心事は最後のお楽しみであります。

「ベルエポック」=“良き時代”を現出した大らかな作風が至福の感覚を呼び覚ましてくれる恋愛群像ドラマで、四姉妹の末娘役でデビュー直後のペネロペ・クルスが出演しています。
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