シャチ状球体

蝿の王のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

蝿の王(1990年製作の映画)
2.9
高校生くらいの頃に恐る恐る原作本のページをめくったのを思い出して、懐かしくなったので視聴。

まず、大勢の子ども達が誰が誰だか分からないままストーリーが進んで行くのが問題。小説だと地の文でいくらでもキャラクター描写ができるけど、この映画はそこをすっ飛ばして重要な場面だけを繋げているので、誰が何のために何を思って行動しているのかがさっぱり分からない。

ほら貝を持った者が発言権を得るというルールが決められるシーンは、まだ何とか彼らが文明社会然としたコミュニティを作りたいと考えている説明なんだろうけど、誰の心情も描かれないので"漂着した無人島において、子どもという野生の集団が自らに内包する剥き出しの攻撃性無自覚のまま顕わにしていく"という人間と社会性の関係に対する問い、そしてそれに抗おうとする主人公という構造自体がこの映画版は機能していない。
いつの間にか死んでるサイモンも、原作だと重要な役回りだったような……。

とはいえ、理性を行動理念の柱とするラルフグループから狩りと暴力をメインに生活するジャックグループに寝返る人間が次々と出てきたり、民主的なリーダーが次第に誰からも必要とされなくなっていく様子はリアル。
もちろん、小説を読んだ方がよっぽど面白いという括弧付きで。

最後に、本編とは関係ないけど子役が皆裸足でジャングルを走り回っているので怪我をしてないかが心配。内容よりこっちの方が気になった……。
シャチ状球体

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