「ハラギャティ」

冒頭、大仏が並ぶ寺の一角。念仏と共にー人の女がや教師との小旅行、大自然と風光明媚な土地。退学、罷免、自殺から救った男、二人の結婚、祝福、事故死、散髪式、坊主になる。今、真実の愛を求めてさまよう一人の女が描かれる…本作はイム・グォンテクが一九八九年に監督した尼僧院に入った女性の遍歴を描くダイナミックな演出は当時、韓国の黒澤明と呼ばれていたみたいだ。さて、物語は女子高生子スンニョ、ふとしたことから教師と小旅行をし、やましい事は何もないのに彼女は退学、教師は罷免となってしまう。彼女は尼寺へ入門するが、自殺から救った男に付きまとわれて、寺を追われる。二人は結婚して幸福に暮らすが、やがて男は事故で死亡。その後も献身的に愛を捧げるにもかかわらず彼女に関わる男が次々と死んでいく…と簡単に説明するとこんな感じで、本作で主役のカン・スンヨがベネチア国際映画祭の主演女優賞を受賞して、89年モスクワ映画祭でも主演女優を獲得した作品で、男なしでは生きていけない、真実の愛を求めて彷徨う美少女を好演していた。冒頭の大仏が大量に陳列されたお寺の一角だろうか、念仏とともに印象的なファースト・ショットである。そこから一人の女性がその寺にやってきて、太鼓の音色が鼓動を高め、坊主が一斉に床に腰を下ろすのもインパクトがある。そっからは随分と地味な映画で、物静かに淡々と描かれている。

記録

スンニョ（カン・スヨン）、チンソン（チン・ヨンミ）という二人の尼僧が送る人生と宗教的な意味を探る物語。スンニョは高校生になり、一人旅をしようとしていたが、憧れの教師と一緒に旅をすることにし、一夜を共にしてしまうことで、教師も退職させられ、本人も退学になってしまう。

尼僧院で修業を始めたスンニョは、真面目に禁欲的に修行に励むチンソンの姿に自分を重ね合わせることができない。やがて、自殺しようとしていたヒョヌという男性を助け、俗世間で人を救うという理由で院主はスンニョが俗界に戻るようにさせる。しかしヒョヌは炭鉱で事故死。子どもを儲けたが死産に至った。

スンニョはその後托鉢し、正式に尼僧としての修行に励む。しかし、また別の男性と結ばれ・・・

禁欲的に修行し続けることが救いにつながるのか、それとも現世で苦労にまみれることが本当の幸せにつながるのか、そんな究極の問いを突き付けるような映画でした。カン・スヨンは自然体で不幸ながらも自分の人生を相手に捧げるような不安定さを宿した女性を精一杯演じています。

また、そのような女性に近寄る男性が相次いで不幸に見舞われていきますが、それも人生の悲しさ、有り様だと思わせるようなストーリーでした。