半兵衛

真昼の暴動の半兵衛のレビュー・感想・評価

真昼の暴動(1947年製作の映画)
3.6
『仮面の米国』など戦前にもチラホラとあったが、刑務所の脱獄ものというジャンルのパターンを確立して後進の作品に多大な影響を及ぼした一作。

とは言え現在の視点から見直すと90分というやや短い時間で脱獄を図る囚人視点のドラマのほかに、刑務所を支配せんとする看守長と所長の対立、彼らの動向を客観視しつつ囚人たちに親身になって接する刑務所掛かり付けの医者など色んなドラマが盛り込みすぎていて物語の軸がぶれてしまう結果になっているのが惜しい。後半に至っては陰謀により所長を追い出した看守長が所長に就任し、それに反発する囚人たちが騒ぎを起こす…という社会派ドラマに変貌し肝心の脱獄要素は薄まる羽目に。また刑務所を脱獄する計画がザルだったり、それまで非情な男として計画を練っていた主人公のバート・ランカスターが病気の恋人と絡むと唐突にメロドラマになり作品の雰囲気が変わるなど色々残念な部分も。

それでも刑務所内部の重苦しい雰囲気や、雨や雷などを天候を巧みに使った演出、光と影を効かせた映像がパターン化した現在の刑務所ものとはひと味違う世界を構築している。あと囚人が看守のスパイになった仲間をリンチしたり、看守長が情報を聞き出すため囚人に拷問したりする場面の娯楽的な暴力とは違う生々しさに息を呑む。その一方で歌が好きな黒人囚人や、囚人の一人がかつて騙された女性(凄い美人!)を懐かしむ場面など息抜き要素もある。

ラスト突然作品の空気が変わりバート・ランカスターVSワルの看守長という対決になるのに驚く。

屈強な肉体と精神をあわせ持つ主人公のキャラが肉体と演技両方兼ね備えたバート・ランカスターにぴったり、また顔はへらへらしているが凶暴さとずる賢さを内面に隠し持つヒューム・クローニンの小悪党っぷりも見事。
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