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闇の列車、光の旅のodyssのレビュー・感想・評価

闇の列車、光の旅(2009年製作の映画)
3.2
【通俗性が惜しい】

中米からアメリカ合衆国に何とか密入国しようとする人々の話と、希望の持てない中米の社会の中でギャング団を形成する若者たちの話の二つの筋が交錯している映画です。

この映画の見どころは、やはり列車の屋根に乗ってアメリカ合衆国をめざす人々の姿でしょう。日本人からすると列車の屋根なんかに乗ったら振り落とされてしまいそうな気がしますが、映画を見ると列車のスピードが相当にノロいので、案外安全らしいのです。

とはいえ、途中では検問もありますし、故国でゴタゴタがあった相手が追いかけてきたりして、目的地までたどり着ける確率は必ずしも高くはなさそうです。それでも故国を捨ててアメリカ合衆国への移動を試みないではいられない人々の絶望的な状況が胸に迫ってきます。

中に登場する二人の少女がいずれも美形で魅力的。しかしそのせいで、と言うべきか、筋書き的には男女関係にややありきたりの匂いがつきまとっており、通俗的な味が混じってしまっているのが惜しまれます。

むしろ、社会派的な方向性を強めて、中米の希望のない社会をいっそう入念に描くとか、列車の屋根に乗って移動する人々の様々な出自や人生行路に詳しく光を当てていたら、もっと優れた映画になったのではないでしょうか。見終えて、ちょっと惜しいなと思える映画でした。
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