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スリザーの都部のレビュー・感想・評価

スリザー(2006年製作の映画)
3.8
敬愛する作家の一人として私が強く師事するジェームズ・ガン監督の初監督作品──トロマフィルムで培われたエログロナンセンスの味付けはこの頃から健在で、生理的嫌悪感を掻き立てる抜群のモンスタービジュアルと気の抜けるシュールコメディ的な掛け合いの応酬が盛り込まれた娯楽作である。

本作において最も強烈に目に焼き付く妊婦のシーンのどうしようもなさは言わずもがな、地下室の惨状や寄生生物の奇妙な生態など、ゾンビ映画のような脚本フォーマットを熟しながら拘りを感じるシークエンスが軽快に連続する小気味良さが何より特徴的。

グロテスクはグロテスクなんですが、ビジュアルの凄まじさに対して比較的大人しめな印象はあり、シンプルに気持ち悪い造形が作品の顔になっている印象。例の真っ二つシーンが素晴らしかっただけに、あの類のシーンをもっともっとと求めてしまうのはどうしてもある。

寄生生命体が愛を知ったことで悪辣ながらも哀愁漂う存在として扱われる手付きは最新作:ザ・スーサイド・スクワッドのスターロ大王を想起して、やはり作風やキャラクターの弄び方は一貫していることを再確認させられる。そうした存在を演じるマイケル・ルーカーの怪演により、一面的な侵略者に陥っていないのもありますね──フォルムの変化による異形化もビジュアルとして楽しく、理想化された愛に対して醜悪な姿形になっていくという対比的な構図も好み。

ポップソングを作中に幾度か用いての登場人物の感情や場面の意味を示唆する音楽を物語に有機的に絡める演出も本作から始まっていて、原点に立ち返るという意味で非常に楽しかったです。
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