1994年 デヴィッド・リンチ監督
観ていて、これってジョン・キャロル・リンチの「ラッキー」じゃないかと思いましたが17年も前の映画です。
「ラッキー」にはデヴィッド・リンチも出演、そしてハリー・ディーン・スタントンが主演ですよね。老人の人生と死。奇しくも「ストレイト・ストーリー」のリチャード・ファーンワーズもスタントンも完成直後にこの世を去っています。
そして「ストレイト・ストーリー」で老人二人が戦争の辛い体験を語るシーン(主人公は狙撃兵で誤って味方を撃ってしまった)。ラッキーとトム・スケリットが酒場で沖縄戦の話をする所とイメージが重なります。
「ラッキー」は本作のオマージュなのでしょうか。
心に染みる映画で「ラッキー」共々大好きです。
疎遠になった兄にもう一度会うために560キロを時速8キロの芝刈り機で旅する73歳(現代の73歳と違いかなりのお爺さんです)。
病気の兄が死ぬ前になんとしても会わねばという思いがある一方、つまらぬ言い争いと酒癖での仲違いは心の傷になっていて、会うまでの時間を延期したいという思いもあった気がします。
到着して「ライル！」と呼びかけると見るまでもなく「アルヴィン！」と応える兄。ストレイト兄弟のストーリーです。そして幼少期と同じ満天の星。泣けます。
少し障害があるが心優しい娘のとても辛い過去。
家出した妊婦の少女、
言い争いばかりしている修理工の双子。
通勤中に何度も鹿を撥ねてしまう女性。
自転車の若者たちに年取って良いことはと聞かれ「多少知恵がつく事」。悪い事は「若い頃の事をまだ覚えている事」。
地味だが印象に残るシーンがたくさんあります。
デヴィッド・リンチの振り幅に驚きました。
