DaiOnojima

コマンダンテのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

コマンダンテ(2003年製作の映画)
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 オリバー・ストーンによるフィデル・カストロのインタビュー映画。2002年2月に30時間に及ぶインタビューを行い、それを99分にまとめたもので、カストロは内容の削除を一切求めなかったという。

 政治や歴史や革命や国際問題に対する見解だけでなく、好きな映画とか俳優とか家族とか女性関係とか30年付き添っている女性通訳のこととか、そうしたプライベートな部分を突っ込むことでカストロの人間的な側面を引っ張りだそうとする意図があるよう。ストーンの質問はおおむね直球で、時には的外れな質問もあるが(カウンセラーにかかりたいと思ったことはないか?」とか)、カストロは時にそんな質問をはぐらかしつつ、でも終始穏やかに答える。若いころはもっともっと刃物のように切れる人物だったのだろうが、このころは人のいいおじいちゃんという感じ。キューバ危機のことを語るシーンはさすがにピリピリした空気が流れるが、少なくともアメリカが忌み嫌うような専制的な独裁者という雰囲気は全くない。キューバ市民のカストロを見る目は憧れと親愛そのもので、頬にキスされた若い女性が、まるでアイドルスターに接したみたいにはしゃいでいる。老獪な政治家だから、都合の悪いところは喋らないし見せないのだろうけど。

 この映画は反カストロの在米亡命キューバ人の強硬な反対で未だにアメリカで公開されていないらしいが、そうした人たちが多く住んでいるのがマイアミ。その代表格が「マイアミ・サウンド・マシーン」のグロリア・エステファンですね。彼女の父親はキューバ革命で敗れ亡命した前大統領バティスタのボディガードだったらしい。

 キューバ革命成功後、この時点で40年以上、現在まで62年もの間、カリブ海に浮かぶ吹けば飛ぶような小国がアメリカやソ連など大国の干渉や侵略・謀略・さまざまな思惑をかわしながら革命政府の政治体制を維持できているのは、間違いなくカストロの政治手腕によるところが大きい。そういう意味で20世紀最大の政治家のひとりと言えるカストロを理解するとっかかりにはなるだろう。もう少しいろいろ勉強してみるつもりです。
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