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ヤンヤン 夏の想い出のTOKYOZOMBIEのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.9
早稲田松竹にて台湾のエドワードヤン監督『ヤンヤン夏の想い出』へ。

AOLとか出てきたYou've Got M@ilな時代、ハードからソフトへの転換点とその裏の台湾の産業の行き詰まり。そして、自然や生命の循環という壮大なテーマを都市の中で表現してしまう巧みさ、好き過ぎる。小津安二郎や笠智衆好き必見!アジアの映画の系譜みたいなものある。個人的に人生の5本に入る!いや、ベストエバームービーかも。

この映画の素晴らしい点は俯瞰した目線だと思う。

親の目線、子供たちの目線、過去の記憶の目線、それぞれ苦しみを背負って生きている。この家族や大田は誰かのせいにするわけでもなく、それぞれが絶妙な距離感で葛藤している。うまくいかない人生を責任転嫁してしまうことってあるけど、それぞれの苦悩を描くことで偏らず中和されている感じがとても客観的だ。また、おばあちゃんの騒動と、家族それぞれの恋という世代を超えた大流から生命の循環も感じた。雲は雨となりまた雲となり、時に雷を起こす、これも循環だ。

また、都市の功罪も巧妙に描かれている。都市のビル群やネオンは経済の成長を象徴するものであるが、この映画では比較的窓に映ったり歪んでいる虚像のようだ。劇中の人たちは都市の豊かさを享受している代償として何かを背負っている。

あぁどうしてぼくたちはシンプルに幸せになれないのだろう。少なくとも惨めな人生だなんて決めつけずに、過去のノスタルジーに浸るわけでもなく、今をしっかり大切に生きること。生命を全うすること。そんなことが描かれていたと思う。

個人的にイッセー尾形の英語、素晴らしい。難しい英語使ってないのにすごく深みがあって伝わる。とても丁寧でハートウォーミングな存在。終わったあとエドワードヤンの写真見たらそっくりで、自身を投影してたに違いない。
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