Keigo

平成狸合戦ぽんぽこのKeigoのレビュー・感想・評価

平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)
4.5
おお、おお、おお…
これもまたずいぶんと難解な…
しかもコミカルの化けの皮をかぶっているからたちが悪い。(褒めています)
喜劇でもあり悲劇でもある。高畑勲の客観的で批判的な思想が何層にも重なっているのを、ひとつの落語の演目かのようにおどけて描くことで巧みに中和してみせる。

人間のように描かれる狸たちに感情移入しそうになるとその都度リアルに描かれた狸の描写が差し込まれる。安易に感情移入も没入もさせてくれない。観ているあなた達は人間で、あなた達には狸はこう見えるはずだと確認させられる。あくまでも客観的に観ることを要求される。

「狸合戦」が単なるの狸たちの縄張り争いではないことは序盤、婆や狸の「そんなことしてる場合じゃない」の叱責ですぐに示される。そこからは物語はどんどん重層的に、複雑になっていく。

どこまでも利己的に狸やその他動物たちから自然を奪う人間の愚かしさを憂うことも出来る。あるいは狸という生物や妖怪の類が日本において歴史的にどのように扱われてきたかの史料のように観ることも出来る。あるいは無謀な戦いを挑むために努力し、団結し、分裂し、徹底的に敗北していく狸たちの様を人間に重ねることも出来るし、アニメーションで人々を魅了することへの葛藤と自己批判、そしてその受容のされ方への嘆きを重ねていると観ることも出来る。この他にもおそらく自分が感知出来なかったような眼差しで、この作品を観ている人もいるだろうと思う。

なぜか突然始まったジブリ作品をイチから観直そうキャンペーンもこれにてラスト。(On Your Markだけは観れてないけど。どうやったら観れるの)

『火垂るの墓』
『おもひでぽろぽろ』
『平成狸合戦ぽんぽこ』
『ホーホケキョ となりの山田くん』
『かぐや姫の物語』

ジブリ作品の中で高畑勲が監督した五作品を全て観て、こうやって並べてみると圧巻のフィルモグラフィ。五作品の中で唯一原作がない『平成狸合戦ぽんぽこ』でもこの完成度。高畑勲が本当に大好きな監督になりました。

そして忘れてはいけないのは、高畑勲に文句を言われながらも射程を広く大衆を巻き込む高品質なファンタジーでガシガシ金を稼いだ宮崎駿と、資金繰りから関係各所や会社との調整、さらには高畑勲と宮崎駿の間の緩衝を続けた鈴木敏夫の存在。
彼らの存在なくして高畑勲の名作は生まれなかったという事実もまた、ジブリのアツいところ。

高畑勲展が今月末からしばらく岩手でやっているらしい。東京でやっている時はやってることすら知らないぐらいだったからな…
岩手まで行こうかな。
Keigo

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