menoki

怪談蛇女のmenokiのレビュー・感想・評価

怪談蛇女(1968年製作の映画)
3.3
物語が分かり易く、幽霊のビジュアルと演出は良いが、幽霊の中身が残念な作品。

あらすじ

明治初期の北陸、小集落の小作人・弥肋は冷酷な大地主に虐げられて命を落とし、地主の下で働いていた妻のすえも蛇を助けようとした咎で絶命。
やがて地主一家は蛇の影を伴ったすえの亡霊に悩まされるようになる。


悪事を働いた悪党の地主に虐められた命を落とした小作人が亡霊になって化けて出てくるといったような分かり易い内容であり、また物語の運び方や構成が上手く中身が濃い為、物語に非常に入り込み易くなっている。
演技に関しても非常に上手い役者が多く、パッと見ただけで虐げられている役や悪役などの役柄が分かるよう雰囲気までキャラクターをしっかり演じきっている。

また、キャラクターに関しても魅力的なキャラクターが多く、どのキャラクターも物語に必要不可欠な存在であった。
最近のJホラーは主要キャラクター以外はキャラクター作りが結構適当に設定されている事が多く、鑑賞後は全く心に残らない事の方が多く思える。
しかし、本作の場合は主要キャラクター以外もキャラクターがしっかりと作り込まれており、鑑賞後もしっかりと心に刻み込まれているものとなっている。

幽霊のビジュアルに関してもかなり良く、物語の雰囲気や幽霊のビジュアルにマッチしたライティングと美術と音楽に依り、視聴者により一層幽霊を不気味に恐ろしく感じされるようになっている。
また、お約束のタイミングとは違ったタイミングで幽霊が出現するのが多いので、ある程度ホラーに慣れている人の方が驚くかもしれない。

あと、女性差別についても深く考えさせられるようにもなっている。
結婚の約束をしている女性がレイプされたら、今なら加害者のみを怒ると思うんだけど、劇中では被害者女性に対して、

男「何故もっと抵抗しなかった!!」

と怒っていたが、これが明治初期の常識だったのだろうか・・・。
本作を鑑賞して、福田事務次官のセクハラ事件が頭をよぎったが、被害者女性が悪いだとか言っている人もいたっけ・・・。
切り取りだから会話の内容を全て晒せとか名乗り出ろとか言う人もいるけど、その人達はセクハラを受けた女性の事を少しでも考えた事があるのかな・・・。
そういう人って、例えば上司のパワハラを苦にして自殺した部下がいたとして、マスコミが部下のプライバシーに配慮し、上司が部下にしたパワハラ音声を編集した状態で公開しても、切り取りだから信用出来ないとか全部晒せとか言うのだろうか・・・。
山口達也に関しても擁護的な意見をしている女性がいるみたいだけど、こんなんだから日本は男女平等ランキングで114位とG7(主要先進国)ではぶっちぎりの最下位なんだろうなぁ~。

話がそれてしまったが、とにかく全体的にホラー好きには楽しめるようになっており、最近のJホラーに飽きた人には観てもらいたい作品ではあるが(どちらかと言うとこの時代のホラー映画)、少々不満に思える部分もある。

まず、タイトルが「怪談 蛇女」となっているが、虐められた女性が蛇女となって化けて出てくる必然性が全くと言っていい程感じられなかった。
確かに蛇が関係して死んだキャラクターはおり、そのキャラクターが蛇女となって化けて出てくるのなら納得できるのだが、蛇女となって化けて出てくるのは蛇とは何の関連性のないその娘である。
何故娘が蛇女として化けて出てくるのか良く分からないし、無理矢理蛇に絡めているようにしか思えなかった。
ベタかもしれないが、どうせなら酷い虐めやレイプされた絶望の最中、密かに飼っていた蛇を地主に依って殺され、その後全てに絶望し自殺するという展開の方がまだ納得出来ると思うのだが・・・。

あと、序盤で死んだ親父が化けて出てき過ぎのようにも思えた。
本当に序盤から様々なタイミングで出現しており、明らかに蛇女以上に登場回数や時間が多い。
また、タイトルにもなっている蛇女が締めを持ってくのが普通だと思うのだが、実際蛇女は地主の息子に復讐(?)後は全然姿を見せず、親父が締めを持っていく形になっている。
流石に締めは蛇女が持って行った方が良かったと思うのだが・・・。

また、生前に受けた仕打ちに対して復讐が甘すぎるように思える。
生前は地主からの罵詈雑言は当たり前で、今では考えられないような重労働をさせられ、土を食べさせられたり、レイプさせられたりと悲惨な目に合っているにも関わらず、化けて出てきても恨み節を一切言わず生前に発した言葉を繰り返すだけである。
しかも、その言葉が、

親父霊「土かじってでも借金お返しします。」



娘「若旦那、堪忍して下さい。」

など、下手に出たお願い事なので、とてもじゃないが恨みを晴らそうとしている様には思えなかった。
幽霊のビジュアルや演出はいいのに中身がかなり残念な幽霊である。
「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」程とは言わないが、もう少し悪党にキツイ復讐をして欲しかった。