中澤一棋

クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ ブリブリ 3分ポッキリ大進撃の中澤一棋のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

かなり豪華な作品。変身シーンが多くてワクワクする。夕陽のカスカベボーイズが西部劇パロディで映画好きから人気を博しているが、こっちはニチアサ(特撮多め)パロディだった。ここ最近のシンシリーズでリバイバルしてるゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダーなどハマってるひとも多いので再評価される気がする。

Filmarksの評価が低いが「大人になってから見たらつまらなかった。昔は面白かったのに」というものが散見されて腑に落ちる。確かに子供向け作品のパロディを子供向け作品で行っているのにもかかわらず、ひろしとみさえが怪獣退治にのめり込んで家事や育児を放棄しだすあたりは子供向けを望む大人向けではないかもしれない。
だからこそ負傷して塞ぎ込んだ両親の代わりに、しんちゃんが最後の戦いに向かうと、あまり適切とは言えないタイミングでこれ以上株を下げないためにひろしとみさえが駆けつけることになるのだろう。脚本に関して感じた唯一の違和感はここだった。しんちゃんが窮地に陥ってから登場のほうが自然だろう。子供を戦わせる前にまずは両親でなんとかと、かなり倫理的な話の運びである。かませ役になったひろしとみさえのパートはかなり冗長でありヤケクソ感があった。流石に毎回同じビルに吹き飛ばさなくてもいいのではないか。まあそこも豊富な変身姿で尺を補っているのだろう。しんちゃんが変身してからの軽快な音楽が勝利を確信させる。勇気を出すために抱きしめてたヒーローたちが助けにきてくれるのがよかった。

同一人物で複数のキャラデザを作った関係なのか、ほかのクレヨンしんちゃん映画に比べて登場人物が少ない。ミライマンの役割が一面的すぎた。脚本をひねるとしたらミライマンに裏切らせるだろう。変身した理想の体VS現実の老いた体という映画冒頭で示されたみさえの悩みがあまり解消されないまま終わってしまっている。偽しんちゃんはかわいいけど、それだったら変身した偽野原一家VS生身の野原一家のほうが物語としては筋が通ったかもしれない。

映像に凝ってた。みさえのガニ股での家事、しんちゃんを保育園に送ったあとの重たい足運び、ひまわりがお腹のうえで息を吐いたと思ったらみさえとともに寝ているという一連のシークエンスがコミカルであり、またリアリティがある。変身のバリエーションといい、みさえ推し映画である。

3分後の世界で部長を助け周りのホステスからキスされてクレヨンしんちゃん特有のたんこぶができたひろしをバストアップで映すと床の間からリビングへとマッチカットで場所が移る。今敏が翌年2006年『パプリカ』を作る。マッチカットは『パーフェクト・ブルー』の時点で監督の十八番だった。2000年代アニメの流行りを少し知ることができる(もちろん今でも使われる手法ではあるけど)。
中澤一棋

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