トニー・スコット✕デンゼル・ワシントンのなかでも名作の一つ。
海兵隊など様々な職歴を経て、今はアル中のクリーシー。友人レイバーン(クリストファー・ウォーケン)の勧めで、メキシコにあるラモス家の一人娘ルピタ(ダコタ・ファニング)のボディーガードを請け負うことに。当初クリーシーは、仲良くなろうと接してくるピタをあしらい、淡々と職務を全うするのみだったが、彼女の純粋さと無邪気さによって次第に打ち解けてゆく。その矢先、犯罪グループに襲撃され、重傷を負うクリーシー。ピタが誘拐された末殺害された訃報が届き、眠っていた彼の暴力性が目を覚まし復讐劇が始まる、というのが大まかなストーリー。
まず凄いのが役者の演技力。特にデンゼル✕ダコタのどこかレオンを彷彿とさせる年の差バディが物語の核になっているが、これがまた凄まじい。
深い喪失感と鉄の心を持っているクリーシーの一挙手一投足が、常に哀愁を帯びてると同時に人を惹きつける何かを漂わす佇まいであって、それを醸成させることができるのはデンゼル・ワシントンしかいないだろうというマッチ度が高すぎる。
また、物語の華であるピタについては何度も感嘆の声を漏らさずにはいられない。少女の健気な可愛らしさは勿論のこと、大人を俯瞰している冷静さや気の使いようなど、これまた儚げな一人娘の像を巧に演じきっている。生年月日が近いダコタを観て、当時の自分を回顧するのも恥ずかしくなるような彼女の演技は必見中の必見。
そして何と言っても、本作は復讐譚なんだという展開の運びが象徴的。前半部のクリーシーとピタが心を交わしていくほのぼのムービーから一転、恐るべき事態が起きた後の後半部への落差が、トニー・スコットらしさが凝縮されていてインパクト強め。
サスペンスとしては勿論のこと、復讐におけるアクションも手加減なく演出していて、次々と憎き敵を討つ中でクリーシーの残虐性が解放されていく度、爽快さよりも哀しさが増すのが肝なのかなと感じた。
全体的に長尺気味なのは否めないところ、ノンストップで鑑賞できる魅力的なムービーであり、大いに心を揺さぶられ掴まれる作品であるのは間違いない。