かえるのエリー

アリス・イン・ワンダーランドのかえるのエリーのレビュー・感想・評価

4.2
2010/05/12

 ティムバートンが「不思議の国のアリス」を映画化する・・・そう聞いただけでワクワクしたファンも大勢いるに違いない。もちろん私もその一人なのだが・・・はて?どんな話だったっけ?

 「不思議の国のアリス」というタイトルをほとんどの人が聞いたことはあるだろう。ちょっと知ってる人なら、懐中時計をもったウサギ、青い服に白いエプロンをつけたアリスを思い浮かべるだろうし、続編に「鏡の国のアリス」がある程度はわかる。ただ、これほどまでにイメージ先行で、話がまったく思い浮かばないのは・・・

 そう、無理もない、これといって話自体に起承転結がないからだろう。元々は作者のルイス・キャロルがピクニックへ一緒に行った子供たちを退屈させないために即興で作った話だそうで、それ故にファンタジックな設定やキャラが満載ではあるが、最後は「全部夢でした」というオチで話を終わらせているので、あくまでも別世界で起こった奇想天外な出来事のみにフォーカスしてるのである。

 今回の映画化は「不思議の国~」と「鏡の国~」の両方からエピソードやキャラを取り入れ、バートンが料理した作品。一応映画らしく”起承転結”は設けられているが、上記の理由から、この作品はただ単にその世界観やキャラ、ビジュアルを楽しめばいいのでは?との結論に自分なりに達した。

 となると十分楽しめる。とくに3D(私はXpand方式で鑑賞)はワンダーランド(劇中では「アンダーランド」と呼ばれている)に行ってからはそのイマジネーションが存分に味わえるだろう。

 アンダーランドそのものの背景はもちろんのこと、原作のイラストがそのまま飛び出したような白うさぎ、ニマ~っと笑うチェシャ猫、そして一際強烈な個性を放っているのが、赤の女王”でかヘッド”!! 絶対夢に出てきますね、これ。(演じるヘレナ・ボナム・カーター、あっぱれ!)

 人物の衣装も素晴らしい。昨夏に日本テレビ屋内にて「アリスインワンダーランドの世界展」なるものが開催されていて、私も一足先にその世界に浸りに行ったのだが、そこには劇中で使用されていた衣装が展示されていて、その芸の細かさに感服したものだ。

 残念なのは原作の持つ言葉遊びの要素が、吹き替えや字幕では存分に楽しめないこと。作者のルイス・キャロルはいろんな顔を持つ人で、パズル作者でもあったらしく、それゆえに言葉遊びにもたけていた。劇中さまざまな言葉遊びが出てきて、字幕もそれを伝えようと漢字に英語の読みのフリガナををあてたりしてたが、やはりそれだけでは限界があり、あぁ、もっと英語ができたらな~といつも以上に感じるのであった。

 それはさておき、作品をほめまくってる(?)私ですが、どうしてもいただけなかったものが一つ。あのダンス・・・。どうしちゃったんでしょうね?19世紀のレトロ感とアンダーランドのファンタジックな世界から、いきなり現代に連れてこられてしまい、ほぼ失笑。1度なら「ウケ狙い?」と思えるものの、2度までも・・・。パンフレットを読むとティム本人が考えたダンスらしいが、彼の大ファンの私でもそこだけは受け入れがたいな~(苦笑)