科学を粉砕する人間讃歌。
人工授精で優秀な人類を残すべきと主張する生物学者と、男はいらないが子供は欲しいと思っている田舎娘が恋に落ちる喜劇。
南仏プロヴァンスの自然が美しい。木に止まる蝉、河畔のキャンプ、水浴するネネットの後ろ姿など、色と光が豊かで絵画のような映像に酔いしれた。タイトルとなっている草の上の昼食会を期待していたが、教授、いとこ、婚約者、崇拝者、マスコミらでガヤガヤしてて、嵐のような突風が吹き荒れてワチャワチャ大騒ぎ。強風のシーンがちょっと長かった。
風。これによって物語が大きく転じる。風が吹き飛ばしたのは「教授」という肩書で、嵐が過ぎ去れば方向音痴で迷子になるただの男。そして水浴するネネットに見惚れてフォーリンラブ。仲間の元に戻れないのは強風のせいでもなく迷子のせいでもない。科学じゃ証明できない愛は厄介で素晴らしい。愛の交わりを見せず、風で揺れ動く草と川面の映像でそれを描くルノワール。
神父と教授の会話が印象的。「人間を月に送って何をさせる?オリーブの木陰より快適かね?」と言う神父の言葉がいいね。信仰と科学が対立し、最後に「共存」の握手で終わるのがいい。
自説を覆すラブパワー。結局、一周回って男は女が必要で、女は男が必要だというルノワールの幸福論が良かった。