ガリガリ亭カリカリ

仄暗い水の底からのガリガリ亭カリカリのレビュー・感想・評価

仄暗い水の底から(2001年製作の映画)
4.4
水が怖い以前に、老朽化したマンションの厭演出がいい。雨漏り、壁のシミ、不味い水道水、貯水槽、日当たりの悪さ、湿度の高さ。真っ暗で湿った建物に向かって雨が降り続ける。『残穢』的な穢れの空間。

自分たちが住む階数のエレベーターのボタンに、タバコの消し跡があるのが厭すぎる。それを見て、離婚調停中の喫煙者の夫がもしかしてここに来たのかもしれない……と想像してしまうのも厭だ。

クライマックス、エレベーター内での幽霊のクローズアップよりも、エレベーター側から娘を目撃するあの瞬間の、全てが歪んで、全てが後戻りできない、不可逆な恐怖というものを撮ることができていてやっぱりすごい。

エピローグが余計だという感想があまりにも多いが、あれはすごく怖い。この映画の、この場所の、あの時間の、あの行為と誠実に向き合った結果、ここまで残酷なまでに突き放さなきゃならないという。死は永遠の孤独ってやつ。そして、そう簡単に、感傷的に、時計の止まった人の業を背負ってしまうことの罰みたいな。手前の母の決断に泣いちゃった観客を困惑させる"真実"って感じ。これは『クロユリ団地』とも通じるテーマな気がする。

『仄暗い水の底から』と『ノロイ』に出演しているホラーヒロイン、菅野莉央さん。