ツノメドリユージーン

ケスのツノメドリユージーンのレビュー・感想・評価

ケス(1969年製作の映画)
4.2
鳥好きとしては、観ておかなくては。

以下ネタバレあり。



ドキュメンタリーのようにリアル。
ビリーの父は蒸発してしまい
いない。
年の離れた兄貴も父親がわり
どころか毒でしかなく。

母は仕事でいつも居ない。

朝は、新聞配達。
背も低い。
授業はうわの空。

でも、生き物好きらしく
今までも、小狐まで飼ったことがあるという。
ある時隼のヒナ(ケス)を見つけ、
訓練することを思いつき
古本屋で鷹の飼育書を万引き。
(その前に図書館でかりようとするのだが、親の許可がいるということで断念。母に頼んでも、多分「また今度ね」と言われ忘れられるからであろう。)
兄は炭鉱夫で高望みせず、博打や酒でその日暮らしすればいいといったかんじで母も子育てに疲れ、今付き合っている男のことばかりで主人公の男の子ビリーに誰も向き合っていない。

学校の先生からも新聞配達の親方からもダメな子扱いされている。

そんな孤独なビリーだが、自然が友達だった。
私も幼少期そんな子どもだったので、共感しかない。
授業でケスのことを話している時初めてイキイキとした表情をみせていた。
きっと自然から動物からたくさんのことを学んできたのだろう。

最後、糞兄貴がケスを殺してしまう。
この絶望の中、母は「また飼えばいいじゃない。」と言う。
何も分かっていない。
隼のヒナなんてそんなに手が届く所になかなかいるものじゃない。
たとえ、隼のヒナを得たとしてそれはケスではないのだ。

これから、就職するキャスパー、
この環境で燻って生きていくのか。
ラスト、感傷を排してビリーがケスを土の中に埋めたところでブツ切りされて終わる。あくまでもドライである。

自分より身体の大きい男に負けじと喧嘩したビリー。

気高く、広い空を飛ぶケスと出会ったビリーはこの狭い世界から抜けだせる。
そう信じている。