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久しぶりに鑑賞。
デ・パルマ監督作品だ。
ヒッチコックへの敬意と尊敬の意(同じやで)を感じるサイコサスペンスの佳作である。
ただ、ヒッチコック作品にはないエロティック場面が少々ある。
冒頭からエッチなシーンだ。
若干、唐突で意味不明だが、エッチなので大目に見てあげよう。
物語の構成は「サイコ」と似ているかもしれない。
主人公と思われた女性が前半に惨殺され、中盤以後、別の女性が事件を追うという展開だ。
「サイコ」のジャネット・リーに相当するのが、アンジー・ディキンソン。
ヴェラ・マイルズをナンシー・アレンが、という役どころだ。
アンジー演じるケイトは一見、良妻賢母と言える女性だ。
一人息子のピーターとの関係も良さそうである。
しかし、ケイトは夫に不満を抱えており、浮気願望があるようだ。
美術館で出会った見知らぬ男とあっさりメイクラブをしてしまうのである。
この美術館の場面が、無駄にサスペンスフルで面白い。
言ってしまえば、助平な男と女の出会いの場面なのだ。
ここを意味ありげに、じっくり仕上げた力技に惜しみない拍手を送りたい。
カレンは男の部屋を辞去した後、無惨にも殺されてしまう。
この場面がまた秀逸だ。
「サイコ」を思わせるBGMをバックに、カレンに振り下ろされる剃刀の刃。
だが、その描写は「サイコ」より、はるかにリアルで血みどろなのだ。
哀れ、カレン一巻の終わりの図である。
この惨劇の目撃者にして第一発見者となるのが、ナンシー・アレン扮するリズだ。
ここでヒロイン交代となる訳である。
リズはケイトの息子のピーターとともに、犯人捜しを開始するのだが、逆に犯人から命を狙われる事になる。
リズの運命や如何に!
一体どうなってしまうのか!
そんな物語である。
ナンシー・アレンはこの頃、デ・パルマ監督のお気に入りだったのだろうか。
「キャリー」では唾棄すべきいじめっ子を演じていたが、本作では一転ヒロインだ。
えらい出世である。
監督をして何か刺さるものがあったのだろう。
もちろん、私にも刺さった事は言うまでもない。
以下ネタバレ
以上の私のレビューを読んで、賢明な方は何らかの見当がついたかもしれない。
あるいは、軽い疑問を抱いたかも。
そう、マイケル・ケインはどうなっているのか、と。
ケインはこの物語にどう絡むのだ。
ただの賑やかしなのか。
そんなはずはあるまい。
堂々、オープニングの最初にクレジットされているスターなのだ。
無意味な役どころなどあり得ないのである。
とすると・・・・
いや、皆までは言うまい。
私にも理性と常識があるのだ。
むやみに犯人を仄めかすような愚を犯さないのが、真の常識人なのである。
シン・常識人なのだ。
すんでのところで犯人を仄めかす事を思いとどまった私に、ねぎらいと賞賛の拍手をいただければ幸いである。
あと何か豪華な賞品を!
賞金でも可!
まあ、そこは皆々様の良心にお任せするとして、とにかくこの作品を心ゆくまでご堪能あれ、なのである。
一体犯人は誰なのか!
手に汗握りながらご鑑賞いただきたい。