けっこう面白かった。

自分の番をただただ待ちながら毎日を過ごす死刑囚たち。ある者は念仏を唱え、ある者は脱獄を図り…。残り少ない日々を、君たちはどう生きるか！？

左卜全がいいんだよなあ。執行の数日前に、子どもたちに囲まれて。沁みるぞー！

死刑囚・小林旭が何をしたのかは徐々に明らかになるが、他の死刑囚についてはその歴等多くは語られない。盲目の子ども達に慕われている超聖人の卜全おじさんとか何をしでかしたのか…

しかし服装が自由な監獄だなー。

減刑狙いで狂ったフリをしている天本英世は迫真過ぎてホンモノにしかみえない笑

各死刑囚を紹介する序盤は行儀が良くてまるで教育映画のようだけど脱獄を企てる中盤から加速。

序盤の見どころは、いつも撮影見学に来たお爺ちゃんを引っ張り込んだのではないのかと心配になる左卜全が珍しく俳優らしい演技をしているところ。
刑務所でコツコツと子どもの本の点字訳をするその姿はワケありっぽくてちゃんと死刑囚に見えた。もちろん盲学校の子ども達との初対面シーンでは涙。

悪徳オートレース(注・色んな映画サイトではボートレースとなっているけど私の思い間違いか？)の元締殺しの罪で主人公の小林旭は死刑囚に。
元締の勝気な妻が北林谷栄で、老け役じゃないから違和感。でもレアなもの見た嬉しさの方が軽く勝る。
その娘の浅丘ルリ子はほぼトップにクレジットされているけど殆ど台詞がないし、終盤の裁判でのアップがくるまで気づかなかった。というかfilmarksのキャスト欄では何故か葵真木子となっておる…。
本作がのちに事実婚となる小林旭と浅丘ルリ子の初共演作らしいけど、会話もなく一緒に映るのは上記の裁判ワンシーンのみ。

シネフィルには『第三の男』、オタクには『地獄の謝肉祭』を思い出させる地下水路からのスリリングな脱獄が最初のクライマックス。

家族の元に帰った石塚が待ち伏せの刑事に捕まって、刑務所へ逆戻りする車を追いかける石塚の息子の姿はまさにネオリアリズモ。ここでも涙。

インテリで人間味のない金子信雄がいよいよになって飯をガツガツ食べながら人間味を出す演出はちょっと。

冤罪も恐ろしいけど、刑務所長や刑務官が悪役でもなく善人でもなく、法律だから仕方ないと思考停止しているところが一番恐ろしかった。

評価は全くないようだけど社会派娯楽映画の佳作でした。

＊死刑映画週間