特濃ミルク

炎上の特濃ミルクのネタバレレビュー・内容・結末

炎上(1958年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

 これは…。うーん。……。
 三島由紀夫の原作はすごく好きで、もう5回くらい読んでいるけれど、あの原作の豪華絢爛な形容、心理描写の横溢に触れてしまうと、この映画は少し物足りないと感じてしまうかな。
 確かに要所要所の印象的なシーンは割と拾えているんだけど、やはり100分弱という時間の制約のせいで、拾いきれなかった重要なシーン(有為子のエピソードや主人公の情事に割り込んでくる金閣など)がいくつもある。そして何より、詰め込んだエピソードの展開が駆け足ぎみで余韻に浸っている間が充分にないし、まあ良くも悪くも原作のダイジェスト版という感じだったな。
 ストーリーを追うだけなら映画の方がいいだろう。原作と比べて全体的に内容が薄いとも言えるが、裏を返せばあの情報量を良く纏められているとも言える。
 ただ主人公が何故あの行動に走ったか、友人、親、和尚についてどう感じていたのか、などについての重厚な心理描写は原作に及ぶべくもない。ただし原作に挑むとそこらへんの描写が濃厚すぎてリタイアする可能性あり…。
 つまりは相互補完的に両方鑑賞するべし。
 他にも言いたいことはあるが、とりあえず映画版の「炎上」は色んな事に配慮してるなぁ。寺院の名前、和尚への同情的な描写、母親の自殺…。そこからは決して主人公の行動を美化しない、そして第二の被害を出さないという覚悟が見て取れる。個人的には引っかかるけど、まあそれはそれで良いと思う。
 とにかく、俺は原作がっ好き〜。
特濃ミルク

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