Ryoma

ソナチネのRyomaのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.6
ニタニタ笑って硬直。息をひそめて、ふくらんだ。ふくらんだ、腹のあたり、“手”を押しあてて、やっと、ふくらんだ。“手”を入れて、どくどくと、脈を打つ、はらわたの、疼く、あたりが、生温かい、内臓の、あいまいに、うたっている、皮膚感覚や、あいまいに、ゆれている、舌苔、執拗に、絡みつく、ヤシの木、枝、ささくれ、消え入った泡の感触……。呼吸。風の末端。吸盤の手触り。“手”を振っている誰かの影。何度も何度も“手”を振っている影。死の影は逃げてゆく。生の影は冷たいコンクリートの表面に宿っている。ヒイヒイ呼吸している。あいかわらず、生と死が、ぴったりと、張りついて、水平方向へ、ボロボロになった、風の、末端へ、すべりながら、横回転する、誰かの影。ヒイヒイ呼吸している。曇天の中心へ、凝縮した、おれの影は、誰かの声をかりて、吃るように、叫んでいる。ヒイヒイと。ひそひそと、やってきたのは、死の影ではない。あらゆるものの存在から、完全に、孤立した、へんな影だ。へんな踊りを、へんに踊っている、へんな影。敏感な鼻腔の、粘っこい壁を蹴って、アチチと叫んで、頭を掻いて、へんに笑っている、へんな影。死の淵へ向かって、無限に膨張する生の、ツルッとした表面に射す、影の……
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