Ryo

アイズ ワイド シャットのRyoのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
4.8
夫婦のうまくいくコツは互いを詮索し過ぎないこと、仮面は外さないこと、…ファック

叶わなかった夢や性的な妄想は現実にも影響を及ぼす

ニコールキッドマンが裸になり観客は驚き目を見開いた時にタイトルの「アイズワイドシャット」
素晴らしいオープニングから始まる今作。

当時本当に夫婦だったトムクルーズとニコールキッドマンが夫婦役として出演しています。

スタンリー・キューブリックが映画を作る際には、先ず自分が作りたいものが先にあって、それをうまくストーリーに仕立てた原作本を探し出す、という作業を繰り返してきました

ネタバレ&解説

トムクルーズが医者役として出演しておりこの主人公があるパーティーに出席する。そこである親父から薬物をやらせすぎで女が意識不明になってしまったと報告を受け助ける。その女とセックスしようとしていた親父を見てそれまで真面目だった主人公は自分以外の奴らはセックスしたり楽しいことばっかりしてるじゃないか。挙げ句の果てには女はそういうのは興味ないと言ってしまったのがきっかけで奥さんと喧嘩になり、結婚済に関わらず他の男に一目惚れし話しかけられていたら駆け落ちできるぐらいだったという事を知りました。そしてその後婚約済みの父親を亡くしたマリオンが主人公にキスし愛してると言ったことでアリスの告白とだぶってしまい追い打ちをかけるようにますます主人公はおかしくなっていきます。

目を閉じて真実を避ければ安全で、目を開いて真実を追究するのは危険であることの象徴である仮面がアリスの傍らにある。横で眠っているのはもう妻ではない(ビルにとってアリスは妻の像から外れてしまっている)アリスである。予期せぬ出来事に直面したビルに余裕は無い

この映画の原作は夢小説。そしてこの映画も夢に深く関わっており、本来はどうかわからないがあのパーティーなどは夢の可能性が高い。昔フロイト(心理学者)が夢は自分の考えちゃいけない、気づかない本当の欲望が出てくると発表。夢の中で夢は叶えることはできず欲望のため現実で経験のあることしかできない。現実で出来ないことは夢でも出来ないという経験は自分もありました。ただ夢と現実の区別はつけられてないためわからない、そしてこれは本来自分たちも夢を見たとき現実との区別がつかないことからこういうことをやったのかも。

最後の方でアリスが寝ているところにビルが帰宅して、寝室でビルが寝ようとすると、無くした仮面がベッドに置かれていた。
これはビルが衣装と仮面を家に持ち帰り、家で落としたのをアリスが拾って、ベッドに置いた。アリスは何気なく置いただけの仮面。
ビルにとってはやましいところがあるから、恐怖に見える。だからビルはアリスにすべてを打ち明けたのだと思う。

ビルはジーグラの部屋に呼ばれ行き「あの謎の軍団の名前を教えたら君は眠れないだろう」と言いました。(もしかしたらフリーメイソンを意識してるかも?)あれが謎でした。


・映画で出てきた謎の儀式はキューブリックが関わっていた可能性の高いフリーメイソンで行われていたものに非常に似てるという。それを秘密裏に撮影し試写会の5日後にキューブリックは謎の死を迎えた。

・キューブリック監督の「2011年宇宙の旅」という映画ともよく似ている。「2001:A Space Odyssey」という原題だが、Odysseyというのはギリシャのトロイの木馬を発明した実際の人物。国に戦場から帰ろうとするが美女に誘惑されて帰れなくなる。も、美女の誘惑を振りほどいて、何年もかけて帰ってくる、という人物の話。

・館での謎の女
→この女はマンディーであるが、ジーグラーの館でビルに介抱されたときに、「君は本当に運のいい人だ…今回は大丈夫だったが、こんなこといつまでも続けられない。いいね。」と言われた言葉を今度は危険の迫っているビルにそのまま返すわけで、このあたりの描き方も芸が細かい。

・パスワードのフィデリオは忠実や浮気しないという意味。

・妻の名前はアリス。これは不思議の国のアリスから取っており不思議の国のアリスのストーリー自体、色んな冒険をしている間にトランプに襲われる。その瞬間ハッと目が覚め夢だったと気づき助かったというストーリー。

・【レインボー貸衣装店】
ビルがジーグラーの邸宅で2人のモデルに連れて行かれそうになった「虹のふもと」を受ける形でこの店が出てくる。

・トムが途中手にする新聞の見出しにはLucky to be alive (命からがら助かった)と書いており、そのときの主人公の状況を表し現実ではないのではないかともとれる。

・夢小説とは
シュニッツラーがフロイトに影響され書いたこの映画の原作で主人公の医者は妻子持ちだが浮気したいという気持ちにかられあたかも現実のように浮気する行動が描かれる。作者は夢だと悟られないようこれが夢だとはあえていってない。

・タイトルの意味
アイズワイドシャットはよくアメリカの結婚式で使われる言葉で
「Keep your eyes wide open before marriage, and half shut afterwards.(結婚前は目を十分開け、結婚後は目を半分閉じよ)」これは、結婚前は大きく目を開いて結婚相手を決めなさい。でも、結婚後は、目を半分閉じておいた方が良い、つまりは妻や夫のことを根掘り葉掘り聞きすぎると、結婚はうまくいかないよ、という意味

・「幸福なカップルに存在するセックスについての矛盾した精神状態を探り、性的な妄想(ビルの妄想)や実現しなかった夢(アリスの海軍のあの人に対する思い)を現実と同じくらい重要なものとして扱おうとした」―これがキューブリック自身、この作品に寄せた唯一の公式コメントとされている
叶わなかった夢や性的な妄想は現実にも影響を及ぼすかなり大切なことということですね。

・キューブリックの奥さんはこれはキューブリックの遺言なのよと言っている。この作品のラストは私達に必要なことは1つ、fuckよ。で終わっており、夫婦間で上手くいかなかったらとりあえずヤれというメッセージが汲み取れます

夢もまたすべて、ただの夢ではない
Ryo

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