トロかじき

火宅の人のトロかじきのレビュー・感想・評価

火宅の人(1986年製作の映画)
4.2
火宅の人

火宅とは、燃え盛る家のように危うさと苦悩に包まれつつも、少しも気づかずに遊びにのめりこんでいる状態

小説家・桂一雄(緒形拳)は後妻ヨリ子(いしだあゆみ)と前妻との4人の子、ヨリ子との子供1人、5人の子供と暮らしていた。
次男の二郎が日本脳炎にかかり、脳も体も麻痺状態に。妻ヨリ子は怪しい宗教にすがり二郎に儀式をする毎日に。そんな家が嫌になった一雄は劇団女優の恵子(原田美枝子)と関係を持ち、アパートを借りて恵子と住むようになる…

いやぁ〜昭和エネルギッシュ男女七転八倒生き様!最高に最低な物語ですね!
緒形拳は中学生?の頃に観た「薄化粧」がトラウマ級に覚えていて、今回もヤベぇ奴を見事に演じてますね。

自伝的小説が原作らしく、この小説家は太宰治や中原中也とも交流があったんですね。1950年代〜60年代の話なんやろね。
妻にも愛人にも「ですます」の丁寧な口調…なのにねぇ。作家や芸術家はやっぱアレな世界で生きてるんでしょうねぇ。

妻、いしだあゆみも怖い怖い…こんな妻おったらこんな事でけへんっぽいのになぁ。

しかし恵子を演じた原田美枝子が素晴らしいですね!今の女優でも太刀打ち出来ないスタイルと濡れ場。五社映画での濡れ場を演じる女優さんも凄いけど、この原田美枝子さんも素晴らしいですね。説得力ありますわ!

そしてこの手の映画の「別れのシーン」ってぐっとくるんですよね。
あと五島列島〜旅のシーンの風景カットは凄いですね。

時代は昭和で当時の人らのドロドロ人間模様やけど、この手の話は今の男女、夫婦でもあったりして。
まぁこんな地獄を味わう味あわせるのは流石にエグいので…
人生においては、ワテは火宅ではなく対岸の火事で、プレイヤーではなくギャラリーに徹するのが精神やられないコツですかね。

観応え抜群のパワー溢れる昭和映画でした。