寅さん

ジョニーは戦場へ行ったの寅さんのレビュー・感想・評価

ジョニーは戦場へ行った(1971年製作の映画)
5.0
本当の恐怖映画、恐怖の正体は暗闇、無音そして永遠。

人とは?生きるとは?。
どうなれば救いがあったのか?
看護師に殺されれば。
意思は伝えられ疎通できてるのは救いか?

彼は戦場に行った。そこでの爆発に巻き込まれるのだが。。。
本能で生殖器を庇う。だから生殖器と脳だけが残った状態で生き残る。
病院に連れてこられ死なない所までは治療して貰ったのだ。
しかし生きていて痛みは感じる。思考もできるが、ずっと考えるだけで意思を伝えることはできない。
そう体の大半を欠損し所謂ダルマと言われる体になってしまったのだ。
両手両足、顔の脳から下に掛かる目、耳、鼻、口、顎がなくなってしまい文字通り身動き一つ取れなくなってしまった。耳も聞こえず、喋る事も出来ない。

彼は起きてるか寝てるかも分からない状態に陥る。
手術後の額の抜糸もネズミに喰われてると感じる。

〜回想・思考シーン〜
自問自答。彼の中に色んな人がいて対話をしている。母親だったり、キリストだったり。
民主主義の為なら息子も差し出すと言うお父さん。若者は家がないから戦い、大人は家を守る。
キリスト(ドナルドサザーランド)と夢について考察する。
肉の塊の自分についても。
祖国のための死は甘美なり。
〜回想はカラーなのに現在は白黒で映すのでジョニーを疑似体験させられているようだ。
この多彩な場景はこの時代の映画の特徴で好きなところ。
思想と家族の絡みが死よ、さらばを思い起こされる。

〜些細な幸せ〜
婦長の人としての優しさ、婦長が窓を開けてくれた為、太陽で喜びを感じることができた。
クリスマスに看護師が胸にメリークリスマスと書き、その情報により日付を手に入れることができた。

〜そして〜
頭を降りモールス信号を送るが大尉には反射運動と取られ鎮静剤を打たれる。
それでもめげずに看護師にやる。
やっと伝わる。やっと。SOSが伝わる。
そして殺してくれと。何度も伝える。
意思を尊重してくれた看護師に感謝を。
邪魔される。
死ぬこともできない。
心でSOSを唱え続ける。

〜本作の特徴〜
残酷な姿は見せない。
コミカルに描くところもあるが不安にさせられるシーンばかり。
詩的なセリフが多い。

〜〜〜〜〜〜
人間とは
人の尊厳とは

言いたいことが言えない世界
伝わらない恐怖
ジョニーの様な状態にならなくてもこの状況はあるのでは?
監督ドルトン・トランボはジャーナリストや映画批評雑誌の編集長を務めた後、シナリオライターになり売れまくるのだが、政治的な赤狩りで映画会を追われた上、捕まってしまう。出所後に偽名で作品を作りアカデミー賞を獲り、更にローマの休日も偽名で作った人だ。


因みに吹替もおすすめです。

メタリカのoneも聴いてみて下さい!
寅さん

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