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運動靴と赤い金魚のRyuのレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
3.9
貧しい家に暮らす少年 アリは妹 ザーラの靴を修理してもらった帰りに、その靴を失くしてしまう。親に知られるのを恐れたアリはザーラに内緒にするように頼む。履く靴がなくなってしまったザーラ。そこで2人は、朝はザーラが運動靴を履いて登校し、昼はアリがサンダルで学校の近くまで行き、下校途中のザーラと互いの靴を交換して学校に行く という靴を共有することにする。

第21回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞し、イラン初のアカデミー外国語映画賞にノミネートされた作品。
めちゃくちゃ胸がキューッとなりました。子供が健気に頑張る姿には自然と笑みがこぼれてきて、挙句の果てにはちょっと泣きそうにさえなる始末。
妹の靴を失くしちゃったお兄ちゃん。妹は「このままじゃ学校に行けない」とご立腹。お兄ちゃんはなんとかしようと奮闘しますが、ことはそう簡単には運びません。上手くいかないことばかりでも、泣きながらでも、健気に頑張るお兄ちゃんの姿はとてもたくましかったです。
妹ちゃんも、お兄ちゃんに怒っちゃったりはするけど、コチラもまた健気。学校が終われば、待っているお兄ちゃんも元へブカブカの靴で猛ダッシュ。学校で失くなった靴を履いてる子を見つけても、詰め寄らない。自分が貧しくても、同じ貧しい人からは奪ったりはしない。この姿勢を子供がとれるなんて素晴らしいと思いました。
イランの貧困や近代化の遅れも顕著に感じました。子供たちもめちゃくちゃ大変だけど、親も大変。お父さんが涙するシーンやアリがお父さんと出かけるシーンも非常に美しく、ホッコリしました。
そして、終盤のマラソン大会。商品の運動靴のために1位じゃなくて、3位を目指すアリ。なんか、子供の徒競走を応援する親の気持ちみたいになっちゃいました。その後の展開もめちゃくちゃ良き。妹の待つ家に帰ってきたアリ。傷だらけの足に集まってくる赤い金魚。これはまさに我々観てる側の「お疲れ様、よく頑張ったね」という気持ちを表しているようでした。幕引きのタイミングも憎いですね。あの後の兄妹の反応も見てみたかったけど、これも余韻に浸れる感じでイイんですよねー。
同じくイランの「友達のうちはどこ?」のように、貧しい暮らしの子供が健気に、走り、奮闘する姿がたまらなくて、心にグッとくる作品でした。
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