垂直落下式サミング

三つ数えろの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

三つ数えろ(1946年製作の映画)
3.7
私立探偵フィリップ・マーロウの行く先々で次々と事件が起こり、個性のはっきりしない脇役が出ては消えを繰り返し、あれよあれよと事件が解決してしまっていて、さてどんな内容だったか。
同じくパルプマガジンが原作のオーソン・ウェルズの『黒い罠』と同様にストーリーを理解できなかったが、おはなしが常に動き続けていることはわかった。探偵マーロウの耳をさわる癖や、ローレン・バコールの太股が痒いのを我慢するなど、本筋のおはなしとは関係ない小ネタが多くある。とにかく画面のなかでずっと何かが起こっているので、それをみていると何となく楽しめた気にはなる。
当時の男性性の象徴だったハンフリー・ボガートのシブい演技がここでも見られ、どの映画でも同じじゃねえかといってしまえばそれまでだが、映画スターとはそういうものだろう。主役に必要な資質は、とりあえず画面に撮しておけば絵がもつことだ。
そもそもハンフリー・ボガートの相手役がローレン・バコールというのは、『脱出』がウケたからもう一回この座組みで金を回収しようという魂胆であり、この時点である程度の映画の方向性は決まったようなもの。ハワード・ホークス監督もそれを承知で割りきって、見世物興業としてまとめている。