スタンバーグの名作。エカチェリーナ2世の半生を描いた伝記映画。モロッコも良作だったが、それから段違いに映画が上手くなっている。本作の前半は、純粋な女の子がロシアのお姫様になることになり、喜んでいると、実はロシア宮廷は卑猥さ、狂気、不道徳のオンパレードで、その異常な世界で彼女があたふたするのを描く。後半は、その女の子が吹っ切れて、暴走して汚い世界で自分の権力を勝ち取るまでを描いており、全体的にかなりスピーディな映画である。
本作は、ストーリーに重きを置いて、キャラクターの感情にフォーカスする感じではなく、どちらかというとロシアの宮廷世界の変態性と、そこに純粋な女の子が取り込まれていくギャップを描いている。なので、特に前半は「千と千尋」に非常に似ており、多分影響を受けている。この宮廷の卑猥で歪んだ世界感が凄まじい。金持ちすぎて何でもできるやつが集まってできた世界は地獄みたいな醜さと豪華で魅惑的な美しさが共存する状態になることがわかる。このカオスを描こうとして扱いきれなかったのが「バビロン」だが、本作は充分に描ききっており、みていてクラクラする。
変態すぎて声に出して笑ってしまう箇所が何箇所もあり、こんなに狂っていて非道徳な世界が昔に描かれていたのかとびっくりした。